福島県議選...『明暗』分かれた各党 攻めの自民にバラ31個咲く

 
記者会見で県議選を振り返る太田幹事長(右から2人目)。壁には31個のバラが並ぶ=11日午前、福島市の自民党県連会館

 第19回県議選(定数58)は議席を増やした自民、公明の躍進が目立った一方、国民民主が議席を減らすなど県内各党で明暗が分かれた。主な各党の動きから県議選を振り返りつつ、今後の県議会運営と県内政界への影響を探った。(文中敬称略)

 「いやあ、すごいな」。投開票から一夜明けた11日。福島市の自民党県連会館で役員の一人がつぶやいた。壁には、候補者名に付けられた当選を示す31個のバラ。16年ぶりの単独過半数という結果に、役員会に出席した議員らが握手で健闘をたたえ合った。

 4年前の前回に続いて全19選挙区に候補者を擁立。福島市と郡山市、須賀川市・岩瀬郡各選挙区には複数の新人を擁立する攻めの姿勢を打ち出し、このうち郡山市と須賀川市・岩瀬郡では全員が当選した。勝因について幹事長の太田光秋は「候補者本人の努力」とした上で、140に上る自民の友好・支援団体と連携した組織戦も奏功したと総括する。ただ、1人区では現職に敗れる厳しい結果もあり、県連内では「もう一度、県連が後援会づくりから携わる必要があるかもしれない」との声も漏れる。

 単独過半数という結果を受け、自民は引き続き議会運営の主導権を握り、正副議長の独占など議会人事の調整に入る。また震災と原発事故からの復興の加速や台風19号からの復旧など、「新生・自民」の力量が試される時期は近い。太田は「意欲ある若手が出馬し、党勢拡大につながった。県民の期待に応えるべく、責任政党として実績を重ねる」と表情を引き締めた。

 国民民主、募る危機感「逆風は強い」

 10日午後10時すぎの福島市の国民民主党県連事務所。いわき市選挙区で現職の落選が決まると、重苦しい空気が漂った。

 何票差だ―。まさか。「開票前には想像もしなかった結果」(県連幹部)に、幹部の一人は「党勢のなさが表れてしまった。中央レベルで大きな固まりをつくらないと、国民(民主)だけでは限界だ」と唇をかんだ。

 県議会で第2会派「県民連合」を組む立憲民主、社民、無所属の現職が得票を伸ばす中、国民の苦戦は続いた。福島市選挙区では上位当選を期待された現職が当落線上の戦いを強いられたほか、郡山市選挙区では4年前から4割近く得票を減らした現職もいた。

 最終的には改選前から1減の10議席となったが、ある現職は「『よく1議席減で済んだな』というのが正直な感想。(各候補の)得票を見ると、逆風は相当に強い」と危機感を募らせる。新人10人を公認、推薦した自民に対し、新人の擁立が1人にとどまったのも課題だ。国民県連幹事長の亀岡義尚は「結果は深刻」とした上で、こう結んだ。「活動量を増やして、県民の負託に応えられる4年間にしなければならない」

 総力戦の公明1増、いわき2議席

 いわき市選挙区では共産と公明が2人の候補者をそれぞれ擁立。ある政党幹部が「国政選挙並みの力の入れようだった」と語るように、各党の思惑が交錯する激しい戦いとなった。

 「いわきでの2議席獲得は復興・創生に向けた課題だった。候補者がよく頑張ってくれた」。現新2人が当選した公明党県本部代表の若松謙維は手応えを口にした。県議選で公明が同一選挙区に2人を擁立したのは初めて。いわき市選挙区では、4年前にトップ当選した現職の得票1万3460票程度にとどまれば共倒れする可能性もあった。

 だが、本県復興を重視する党の方針から2人の擁立に踏み切り、党組織を挙げた総力戦を繰り広げた。県全体でも過去最多の4議席を獲得し、自公そろっての議席増に県本部幹事長の今井久敏は「自公連立政権の発足から今年で20年を迎えた。県政運営もより安定できるよう自民党と連携を図りたい」と決意を語る。

 議席死守に共産は安堵

 「うちが狙い撃たれた状況。何とかはね返すことができた」。いわき市選挙区残り1議席で共産現職の「当選確実」が伝わると、福島市の共産党県委員会では安堵(あんど)の声が漏れた。

 共産は自公が攻勢を仕掛ける中で現有5議席を死守し、定例会の代表質問や議会運営などで発言権を持つ交渉会派(5人以上)を維持。さらに他選挙区でも善戦し、県委員長の町田和史は「6議席に伸ばす土台もつくれた」と力を込めた。