自民新総裁・菅氏の『手腕』注目! 福島県民、復興加速へ期待

 
総裁選を伝えるテレビに見入る平塚さん。「10年先を見据えた農業政策を展開してほしい」と語った=14日、会津若松市

 「国民のために働く内閣をつくる」。14日に自民党総裁に選出された菅義偉氏は、力強い口調で自らの抱負を語った。16日の臨時国会で第99代首相に指名され、国のかじ取り役を担うことになるが、新型コロナウイルスへの対応など国政課題は山積している。加えて、本県は東日本大震災からの復興をさらに加速していかなければならない時期に差し掛かる。「秋田の農家の長男」「地方議員からのたたき上げ」とされる菅氏の選出を、県民はどのように見ているのか。

 「農家らしい実直さを感じるな。親近感があるよ」。会津若松市の農家平塚洋一郎さん(77)は、菅氏の印象を語った。平塚さんは、農事組合法人「会津ひらつか農園」の代表を務める。

 農園は8人で運営しているが、主力は「退職した年配の世代」。若者を雇用したいが、東京電力福島第1原発事故の風評の影響や、感染症拡大による需要低迷などが足かせとなっている。

 「現状維持ではなく、10年先を見据えた農政を展開してほしい」と注文を付けた。

 復興や処理水「現場見て」

 心配する声もある。避難先の山形県長井市で酒造りを行っている浪江町の老舗酒造会社「鈴木酒造店」社長の鈴木大介さん(47)は、「安倍首相が旗振り役になり被災地復興に取り組んできたが、自分には復興が進んだという実感があまり湧かない」と震災・原発事故からの9年半を振り返り、先行きを懸念する。

 菅氏は、東京電力福島第1原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含む処理水の処分について新政権での方針決断に意欲を示している。相馬市の漁師で相馬双葉漁協理事の狩野一美さん(79)は「さまざまな方法を考えるべきだ。議論を尽くさずに急いだ決定はしてほしくない」と複雑な心境を語った。

 同漁協では9月から新たな漁業復興計画を開始し、水揚げ量増加に取り組んでいる。

 狩野さんは「本操業へ向けてこれからという時期。漁業者や関係者の意見をしっかり聞いて慎重な議論をしてほしい。新総裁には、福島の現場をしっかりと見て復興に取り組んでもらわないと」と訴えた。