【迫る衆院選・観光への打撃】コロナ拡大、夏の行楽客も消えた

 
まん延防止等重点措置が適用されたいわき市。お盆期間に入る中、いわき・ら・ら・ミュウの駐車場には空きが目立つ

 収束の兆しさえ見えない新型コロナウイルスの感染急拡大。本来なら大勢の観光客でにぎわうはずの県内の観光地は、昨年に続き静かなお盆を迎えた。

 まん延防止等重点措置が適用されたいわき市にあるいわき・ら・ら・ミュウは、館内の飲食店での酒類の提供を中止した。アクアマリンふくしまをはじめとする周辺の観光施設が休館したこともあり、担当者は「影響は間違いなくある。厳しい状況が続く」と肩を落とす。

 「職域」は終えたが

 いわき湯本温泉の旅館やスパリゾートハワイアンズでは、観光客に安心して訪れてもらおうと従業員らがワクチンを職域接種し、夏の観光シーズンに備えていた。「何度も対策を出されては疲弊してしまう。政治には、厳しくとも効果的な対策を求めたい」。湯本温泉の旅館で働く女性(63)が願うのは、ワクチン接種の早期拡大だ。

 県内の接種は希望する高齢者への接種がおおむね完了する一方、政府からのワクチン供給量が不足しており、今月は各市町村で足踏み状態が続く。30日から10月10日までに、12歳以上の接種対象者の8割相当となる42万8220回分が配分される予定だが、「踏んだアクセルをいったん緩め、また踏まなければならない状況」(内堀雅雄知事)。政府が目標とする11月末までの接種完了の実現は不透明だ。

 「支援待ったなし」

 重点措置適用の影響は、県内有数の観光地・会津若松市にも波及している。同市東山温泉の庄助の宿瀧の湯では適用が決まった5日以降、宿泊客のキャンセルが相次ぐ。「コロナ前の8月は連日、満室が続いていた。この時期に空き部屋が出るのは厳しい」と会長の斎藤純一さん(71)。「食事の時に気に入ったコメや酒を売店で買って帰ったり、通販で注文したりする人も多い。旅館を訪れる人が減ることで、『会津ファン』を増やす機会も減っている」と嘆く。

 ただ、県内でもワクチン接種を終えた人の感染が確認されるなど、インド由来の変異株「デルタ株」の可能性が高く、感染力が強い「L452R」変異が猛威を振るう。政府は昨年末以降、観光支援事業「Go To トラベル」を停止しているが、県の担当者は「少なくとも年内の再開は現実的ではない」と言及。再開に向け確保している予算を活用し、新たな支援策を打ち出す必要性を訴える。

 「関連業者全体が疲弊している。支援は待ったなしの状況だ」。斎藤さんは観光業界の思いを代弁した。

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 新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからない中で、衆院議員は10月21日に任期満了を迎える。秋までに行われる次期衆院選を前に、本県が抱える課題を追う。