いわき市長選・初当選の内田広之氏に聞く コロナ情報開示工夫

 
いわき市長選で初当選した内田広之氏

 5日に投開票された、いわき市長選で初当選した内田広之氏(49)は、新型コロナウイルス対応をはじめ防災、医療、教育と幅広い分野で市政改革に意欲を見せる。新たなリーダーとして選ばれた内田氏に抱負などを聞いた。(聞き手・編集局長 小野広司)

 ―市長として最初に取り組みたいことは。
 「新型コロナの感染拡大を鎮めることが最優先だ。今は情報開示が不十分で、市民の正しい振る舞いは何かが示されていない。差別や偏見を生まぬようにと、情報開示が慎重になりすぎている。コンサートのように不特定多数が集まったところでクラスター(感染者集団)が発生した場合は、いつ、どこで発生したのかをきちんと知らせることが大切だ。一方で学童施設での発生ならば範囲が限られる。もっとめりはりのある情報開示に努める」

 ―いわき市の医療体制をどう整えていくのか。
 「いわきの医師不足は深刻だ。今はそれに対処するための目標設定が見えていない。診療科目ごとに(不足数を)数値化して分析し、何年で満たされるか計画を立て着実に実行する。また、市医療センターの医師への報酬が安すぎるとの声を聞く。首都圏の医師との格差を埋めるために環境整備が必要であり、立て直す」

 ―市役所をどのように運営していくのか。
 「今の市役所は新しいことに挑戦する姿勢が足りない。職員が失敗を恐れずに挑戦できるように上司、そして市長である私が責任を取る、といった組織文化をつくる」

 ―頻発する災害への対応力を上げる課題はどうか。
 「東日本大震災の教訓が引き継がれていない。これまで学んだことをマニュアル化する。平時の備えができていないので、ほかの地域の事例を学び、災害を乗り越える文化をつくり上げる。市職員が全てをやることは難しい。市内にいる防災士を生かすなど市民協働の仕掛けづくりを市がやっていく」

 ―次世代を担う子どもたちの教育や少子化対策は。
 「岩手県では学校教育の中に防災が行き届いており、震災の津波で犠牲になった子どもは少なかった。いわきでも『防災教育日本一』を目指したい。他地域の最先端の取り組みを参考に、安心できる教育を実践する。子育ては成長するごとにお金がかかる。市が支援体制を整える」

 ―そのために財政力を高められるか。
 「国が整備する国際教育研究拠点と関わり、再生可能エネルギー工業団地の誘致を実現し、浜通りが一体となって地元企業との連携を広げたい。そこから新しい企業の育成につなげて地域経済の活性化を図る」

 ―県内で最も面積が広く、地域性の違ういわき市をどうまとめていくのか。
 「震災や東日本台風(台風19号)では、同じ市内でも被害の状況が全く異なっていた。市外の自治体とはスポーツや文化の面で協定を結んでいるが、市内の地区同士が助け合う協定を結び、相互交流を活発化したい」