【知事選・記者座談会】発信力強化を 投票率過去2番目の低さ

 
知事選の開票作業に当たる職員ら。投票率は過去2番目に低く、関心の低さが浮き彫りとなった=10月30日夜、郡山市・宝来屋郡山総合体育館

 現職の内堀雅雄氏(58)が3選を果たした第22回知事選。内堀県政2期8年の評価が問われる中、有権者は県政の継続を選択した形だが、投票率は過去2番目に低い42.58%にとどまり、選挙戦への関心の低さを露呈した。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から3度目となる知事選を担当記者が振り返った。

  12年ぶりに現新2人による争いとなったが、大方の予想通り内堀氏が3選を飾った。選挙戦はどう見えたかな。

  2期8年の実績がある程度、評価されたと思う。道半ばではあるものの、被災地は着実に復興しているし、現職として県内をくまなく回っているだけに、地域ごとの課題にも精通している。「安定感」を感じている人は多く、県政を継続することで各種課題の解決に取り組んでほしいという思いが表れた結果といえる。

 県議は勝負より「投票率」に関心

  自民、立憲民主などでつくる県民連合、公明の県議会各会派が支援し、共産を除く「オール与党」体制での選挙戦。国政では各党が対立する中、県政では「県民党」を打ち出す内堀氏を全面的に支えている。過去2回支援した社民が自主投票にしたとはいえ結果は見えていて、陣営を支える県議たちの関心は「勝負」ではなく「投票率」だった。

  投票率は過去2番目の低さ。有権者の関心は低調だったと言わざるを得ない。ただ、史上初の「40%割れ」の懸念もあった中、過去最低の更新を免れたことは「何とかこらえた」という見方もできるのかもしれない。

  低い投票率の中で、期日前投票は過去最多になった。以前は期日前投票が投票率のバロメーターだったが、ここ数年は投票日当日に足を運んでいた有権者の投票行動が「前倒し」されているだけといえる状況だ。ところで、共産党県委員会などでつくる「みんなで新しい県政をつくる会」が支援した草野芳明氏は、対立軸になりえたのかな。

 「得票率10%」が一つの壁だった

 E 処理水の海洋放出方針に反対を訴え、現職の批判票の取り込みを狙った。大差はついたが、得票数は4年前に同会が擁立した候補の2倍以上で、得票率は11・8%。組織力の違いは明らかなだけに、陣営幹部は「得票率10%が一つの壁だった」と胸の内を明かした。

  処理水問題は大きな課題の一つだが、県民が求めているのはそれだけではないということか。本社の若年層アンケートでも、人口減や子育て支援、物価高をはじめとする経済対策を求める声が多かった。3期目に入る内堀氏には復興施策はもちろんだが、県民生活に直結する喫緊の課題の解決を期待したいね。

  内堀氏は「安定感」が武器だけど、県幹部は「本当はすごく熱い人」と明かす。確かに記者会見などでも、予想される質問に対して用意された原稿を読む回答より、原稿を見ずに自身の言葉で話した時の方が内堀氏の思い、熱さが伝わってくる。

  福島の復興に向けては、あらゆる場面で知事の情報発信が求められている。故安倍晋三元首相の追悼演説で野田佳彦元首相が「政治家の握るマイクには人々の暮らしや命が懸かっている」と訴えたように、まさに政治は「言葉」。内堀氏には強い発信力とリーダーシップを持って、本県の復興と地方創生に取り組んでほしい。