「不信の連鎖」編へ識者の意見【番外編 下】佐藤一夫氏・福島県生協連専務理事

 
佐藤一夫氏

 ◆佐藤 一夫氏(福島県の実情を全国に発信)

 食の安全性、継続発信

 原発事故直後、県内のJAには「危険な農産物を作るのか」などと苦情が寄せられ、放射性物質への不安に起因して消費者が生産者にとっての「加害者」になってしまった側面があった。原発事故の被害を消費者と生産者の対立の問題にしないため、放射線の測定に生産者だけでなく消費者も関わるべきだと考えた。その思いが、全国の生協からボランティアが参加した「土壌スクリーニングプロジェクト」につながった。

 コメ全量全袋検査の結果など、本県農産物の安全性を示すデータは既に多く出ている。連載記事でも指摘されたように、そのデータをどう相手に伝えていくかが今、問われている。

 事故から5年がたち「本県産であることを気にしない」と考える消費者が多くなっている一方で、中には「0ベクレルでなければ安心できない」などと危険視したままの人もいる。

 そうした意見はインターネット上などで拾われやすく、目立つのが現状だ。こうした人に客観的事実を伝えながら理解を得ていくため、伝え方に工夫が必要かもしれない。地道に情報発信を続けることが大事で、時間が問題を解決してくれることもあるだろう。

 (2016年4月15日付掲載)