【復興の道標・放射線教育】教える側の意識が変化 福島モデル確立へ

横浜で、放射線をどう教えるべきか。
原発事故で本県から横浜市に避難した男子生徒に対するいじめが問題となったことを受け、同市の教員ら約90人が今夏、本県で放射線教育に関する研修に臨んだ。
全国で避難者へのいじめが問題になったのを機に、県外の教育関係者が捉える本県の現状や放射線教育への意識に変化が見られつつある。
教員たちは、三春町に仮設校舎を置く富岡町の小、中学校で放射線に関する授業を見学。本県の教員との意見交換では放射線教育の難しさを指摘する声が多く上がった。本県の教員からは「教員は中立にいることが大切。安全だ、大丈夫だと言うのではなく、事実を正確に教え、子ども自身が考え、判断するのを助ける役割だ」と答えた。
横浜市教委は来年度以降も本県での研修を続ける方針だ。教育次長の小林力(59)は研修後「今回見たことや感じたことをいかに発信していくかが大事だ」と強調した。
研修は年に1回だ。しかし、避難指示解除に伴う古里での学校再開など、刻々と変化する本県教育の現状を理解し、放射線教育を考え続けていくための取り組みが県外の自治体で始まった意義は大きい。
一方、新潟県では昨年、本県から避難する男子児童が担任教諭から名前に「キン」を付けて呼ばれて不登校になった。こうしたケースは特殊ともいえるが、今回の研修でも教える側の意識の違いや意識を高めることの重要性が多く議論に上った。
全国で放射線に関する出前授業を展開する日本科学技術振興財団の掛布智久(45)は「一般に原発立地地域以外や西日本で放射線教育への関心は低い。しかし、避難者へのいじめが顕在化したことで強い思いを持って放射線教育を実践している教員は多い」と話す。
本県の高校生たちが訪問したベラルーシには、地元住民らが長い年月をかけ築いてきた独自の放射線教育プログラムが定着している。本県では、学校と地域が連動した「福島モデル」をどう確立し、県内外に発信していくべきなのか、専門家が議論を続けている。
(文中敬称略)
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