【復興の道標・放射線教育】子どもが学び家庭へ 測定検査で実践的活動

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から6年以上が過ぎたが、放射線教育については手探りの状況が続く。この間、他県では本県から避難した子どもに対する「避難いじめ」の問題も浮かんだ。
チェルノブイリ原発事故で被災したベラルーシで、本県の高校生たちが参加した「日本・ベラルーシ友好訪問団」への同行取材などから、在るべき放射線教育のヒントを探る。
ベラルーシの取り組み
「ニンジンはビタミンAが豊富に含まれている。成長を促すから好きです」。少年は器に入ったニンジンを見せながら、手慣れた様子で器を放射線測定器に入れ、検査を始めた。
チェルノブイリ原発事故による放射能汚染が大きかったベラルーシ。原発から数十キロにある南部ゴメリ州のストレリチェボ中等学校(日本の小学校~高校程度)では、子どもが放射線について学ぶサークル「エーデルワイス」が、学校と地域での放射線防護を中心とする実践的な活動を展開している。
野菜の放射性物質の濃度基準は種類によって異なるが、おおむね日本と同じ100ベクレル。少年が測定したニンジンは約30ベクレルで、現地では市民が普通に食べる。
2006年に設立されたサークルのスローガンは「過去がなければわれわれはいない」。08年にスイスから測定器が贈られ、放射性物質の測定を行う地域の放射能測定センターとしての活動を始めた。
身の回りの放射能測定やベラルーシのシンボルであるコウノトリの環境調査などの「地域調査活動」、原発事故の被災者に経験を聞き取り悲劇を振り返る「記憶を残していく活動」、再生可能エネルギー促進を目標とする「環境保護活動」を実践している。
同校の女性教員は、サークルの活動について「大人がいろいろと子どもたちに教えていく。子どもは家に帰って学んだことを家族に教える。子どもを通して知識を増やしていくのです」と話す。身近な人間に教えてもらえば、内容についてより理解が進むという。
サークルは保護者会などの場で活動成果を報告、地域でその情報を共有する。これまで生徒たちは「放射線と食品」などをテーマに発表してきた。
本県からの「日本・ベラルーシ友好訪問団」の一人、相馬高2年の男子生徒(17)はサークルの活動を知って「日本では大人から子どもに伝えていくが、ベラルーシでは子どもが学んだことを大人に広めていくということが素晴らしい」と話し、こう提言した。「一方的に教わるのではなく、エーデルワイスの子どもたちのように放射線の測定など積極的に活動することが重要ではないか」(文中敬称略)
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