「住民の生活再建」本格化 復興拠点、23年春・3町村が解除へ

 

 東京電力福島第1原発事故に伴い、県内6町村に設けられた特定復興再生拠点区域(復興拠点)のうち、浪江、富岡、飯舘の3町村では今春に避難指示が解除される予定だ。双葉、大熊、葛尾の3町村の避難指示は昨年6~8月に解除されており、震災、原発事故から12年を経て全ての復興拠点で住民が帰還できる環境が整うことになる。

 浪江町は、3月31日午前10時に復興拠点の避難指示を解除することで政府、県と合意した。復興拠点は室原、末森、津島の3地区の一部計約661ヘクタールのほか、特産品の大堀相馬焼の保全を進めるために大堀地区の各窯元も含む。

 富岡町は、4月上旬までに復興拠点の避難指示を解除する方向で政府、県と調整している。復興拠点は桜の名所として知られる夜の森地区が中心で、約390ヘクタールに及ぶ。町は夜の森の桜並木周辺を会場とした「桜まつり」が始まる4月8日の前までに、避難指示を解除したい考えだ。

 飯舘村は、大型連休ごろの避難指示解除を目標としている。復興拠点は長泥地区の約186ヘクタールで、村は村議会や住民への説明、政府や県との協議を経て解除日の合意を目指す。

 避難指示が解除された双葉、大熊、葛尾の3町村では、復興拠点内の再生が進む。一方で、6町村が住民の帰還促進に向けた施策などを盛り込んだ「復興再生計画」の事業の完了率は、おおむね10%前後(昨年6月時点)。会計検査院は計画が着実に実施されるよう、国に支援と助言を求めている。

 大熊、双葉の先行除染「試金石」

 帰還困難区域のうち特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域の再生に向けては、国による除染がいつ始まり、どの範囲まで行われるかが鍵を握る。

 試金石となるのが大熊、双葉両町で新年度に始まる予定の先行除染だ。大熊町は下野上1区、双葉町は下長塚行政区と三字行政区をそれぞれ先行除染の候補地とする方針で、住民意向調査や復興拠点の内外により行政区が分断されている状況などを踏まえて選んだ。

 いずれも復興拠点に接しており、大熊町の下野上1区は314世帯877人(復興拠点の内外の合計)、双葉町の三字行政区は294世帯735人(同)、下長塚行政区は56世帯143人が住民登録している。

 政府は新年度当初予算案に両町の先行除染の費用として約60億円を計上した。

 拠点外に特定帰還居住区域

 原発事故による帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域の再生を巡り、政府は避難指示解除の対象として「特定帰還居住区域」の新設を盛り込んだ福島復興再生特別措置法改正案を今国会に提出した。成立後、帰還困難区域がある7市町村は特定帰還居住区域の範囲などを定めた計画を策定した上で、国の認定を経て住民の生活再建に向けた取り組みが本格化する。

 改正案によると、帰還を希望する住民の宅地や復興拠点と結ぶ周辺道路、集会所、墓地など日常生活に必要な範囲を国費で除染。道路など公共施設のインフラ整備も国が代行できる。

 一方、すぐには帰還を判断できない住民もいるため政府は意向確認を繰り返し行う。初回以降に帰還意向を示した住民の宅地などについても、追加で特定帰還居住区域に含める方針。

 拠点外の住民の多くは避難先に生活基盤があるため政府は避難指示解除後も当面、避難先と拠点外での二地域居住を認めるとしている。渡辺博道復興相は改正案の国会提出に際し「帰還意向のある住民全員の一日も早い帰還を目指して全力で取り組む」と強調した。

 政府は復興拠点外の地域について、2020年代に希望者全員の帰還を目指している。新年度から大熊、双葉両町の一部地域で先行して除染を始める方針で、拠点外に住民が戻るモデルケースとしたい考えだ。両町の先行除染の候補地は特定帰還居住区域の第1号に指定される見通しだ。