【明日を創る(6)】特産品に新たな魅力 高田農高(新潟県上越市)

 
第3弾となるドレッシングの開発へ、さまざまな素材を使って試作する生徒たち=9月25日、上越市の高田農高

◆雪室ニンジン使いドレッシング開発 

 新潟県上越市の高田農業高校(竹内正宏校長、472人)の食品科学科の生徒は昨年からJAえちご上越の複合販売施設「上越あるるん村」と連携して、特産の「雪室ニンジン」を使ったドレッシングを開発している。既に第2弾の「雪室ニンジンドレッシング まろやか白味噌(みそ)味」が2月に発売され、売れ行きも好調。現在は第3弾を開発中だ。

◆ロゴも生徒デザイン

 雪室ニンジンは上越市内で収穫されたニンジンを雪室施設で貯蔵したもので独特の甘さが特長。第1弾「雪室ニンジンドレッシング」は上越あるるん村が開発。1年で約3千本を売り上げるヒット商品となった。

 第2弾は上越あるるん村関係者が昨年、同校で授業をしたことをきっかけに、当時の3年生約20人が9月から授業の中で開発することになった。ベースは同じ雪室ニンジン。同校で食品製造と調理などを教える倉重あつ子常勤講師(42)は「最初は作れるのか不安だったが、面白そうだとも思った」と振り返る。

 主役はあくまで野菜だ。「ドレッシングが野菜に勝ったらだめ、と生徒と話し合った」と倉重講師。生徒は年間を通じて加工できる食材探しから始めた。カボチャやタマネギ、ニンニクなど多様な素材を試したが、味が濃くなりすぎるなど、どれもうまくいかなかった。

 そんな中、生徒からみそを使うアイデアが出てきた。誰もが予想しない素材だったが、白みそを使うことで甘く優しい味に仕上がった。上越あるるん村関係者は「上越は『発酵のまち』だが、みそは全く考えていなかった」と、生徒の発想に驚きを隠さない。

審査員らを前に、高田農高が開発した商品に使用するロゴマークのプレゼンテーションを行う生徒たち=9月9日、上越市の高田農高

 当時の3年生でリーダー的な役割を果たした吉川未希さん(18)は「意見を出してもらうのが難しく『違う考えでも言ってほしい』と伝えた。たった一つの商品を作るだけなのにこんなに大変なんだと思った」と語る。苦労のかいあって「雪室ニンジンドレッシング 白味噌味」は、第1弾とともに今年7月、市が認証する特産品「メイド・イン上越」に加わった。

 現在、同学科の3年生18人が先輩の後を継ぎ、第3弾開発に取り組む。生徒は昨冬、雪室ニンジンの収穫を体験。先輩が開発した商品の対面販売もするなど経験値を上げてきた。小出茉依さん(18)は「対面販売のときに聞いたお客さんの感想を思い出しながら素材を考えている」と体験を商品作りに生かしている。

 商品開発だけでない。生徒はデザイン専門家の指導も受けながら、同校開発商品に使用するロゴマークも作成。高田農業高ブランドのイメージアップも図る。

 「第1弾は酸味、第2弾は甘みだった。味覚で残っているのは辛味、塩味、うま味の三つ。試作品を見て決めていく」と倉重講師。12月ごろまで7、8回の試作を経て、第3弾は早ければ来年2月にも上越あるるん村の店頭に並ぶ予定だ。

(新潟日報社上越支社報道部・大嶋博和)

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◆妥協しない姿勢感心 亦野潤一さん
 
亦野 潤一さん JAえちご上越の複合販売施設「上越あるるん村」は2018年3月、第1弾「雪室ニンジンドレッシング」を発売。第2弾の商品開発を高田農業高に依頼した。「試作段階で奇抜な案がたくさん出たが、徹底的にいい商品を作ろうとする姿勢はすごかった」と、園芸畜産課の亦野(またの)潤一さん(33)。納得するまで味に妥協しない生徒の取り組み方に感心している。

 自由な発想で、上越らしい商品開発をしてほしいと生徒に伝えていたが「白みそを使うアイデアは全くの想定外だった」と振り返る。「第1弾を超える商品開発という点で生徒は苦労したと思うが、白みそ味は試作品の段階から抜群においしかった」という。

 第2弾も第1弾と同じペースで売れていて、第3弾にも期待が掛かる。「地域農業の振興もJAの役割。高校生が間に入ることで、JAと地域の距離が縮まった。将来は地元振興のためにこの経験を生かしてもらいたい」とエールを送る。

◆大人とは違う気付き 野口孝則さん 

野口 孝則さん 上越教育大大学院の野口孝則教授(46)は、商品開発に携わる高田農高生にアドバイスしてきた。商品作りという共通の目的へ向かい、失敗を繰り返しながらも、アイデアを出し合う高田農高生の姿に意欲と熱意を実感している。

 「大人は専門に特化し極めようとするが、彼らは大人が気付かないことに気付くことができる」。高田農高生の発想力の背景には、普段の授業を通じて学んだ食品などの基礎知識があると分析する。

 一方、生徒が「大豆バター」作りに挑戦したとき、バターとしてはいまひとつだがほかの食品に入れる具材と考えれば魅力的な商品となり得ると指導。生徒に発想の転換も促してきた。「生きる力は工夫して発想する力。価値感覚を養う上で、地元の食材で商品開発するのは重要な学びとなる」。大人と高校生がうまく連携すれば、授業としても、ビジネスとしても成り立つと期待している。

高田農高(新潟県上越市)

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