映画化ファンのおかげ 会津鉄道芦ノ牧温泉駅長・小林美智子さん<10>

 
お披露目されたラッピング車両の前で記念撮影する私とらぶ(左)。ファンのおかげで映画化とラッピング車両が実現した。右は映画でさくらを演じた声優の明坂聡美さん

 芦ノ牧温泉駅にネコ駅長が誕生して14年になる昨年7月、うれしい出来事があった。映画「劇場版にゃん旅鉄道」の公開だ。アニメと実写を組み合わせ、4匹のネコ従業員たちの絆や成長を描いた物語だ。

 最初に映画化の話を聞いたのは公開の約1年前。福島中央テレビ(中テレ)で2018年から放送が始まった、ネコたちの日常を紹介するコーナー「にゃん旅鉄道」が好評だったことをきっかけに企画された。

 私は「きっと途中で消える話だから、ぬか喜びはやめよう」と本気にしなかった。でも秋ごろには、中テレと製作会社のスタッフが、私にネコとの思い出を聞くため駅に来た。冬になると2代目名誉駅長「らぶ」が雪の中を歩くシーンが撮影された。この時ようやく「本当に映画になるんだ」と実感が湧いた。

 その後、ネコたちの声優が決まると、アニメ好きの駅員たちは大盛り上がり。らぶの声優は、人気アニメ「呪術廻戦」の主役だと喜んでいた。声優の名前を聞いても私にはよく分からなかったが、主題歌を歌うのが大黒摩季さんに決まった時は、さすがに驚いた。

 公開に合わせ、会津鉄道は映画に登場するネコたちの絵を描いたラッピング車両を企画した。資金調達は、インターネットで寄付を募るクラウドファンディング(CF)を実施した。期間は1週間、目標は150万円。達成できるかドキドキしながら見守っていたが、わずか2日で目標を達成。最終的には目標の2倍以上の金額が集まった。完成したラッピング車両は昨年7月、会津鉄道の35周年記念式典でお披露目された。式典にはたくさんのネコ好きや鉄道ファンが足を運んでくれた。

 CFや式典を通じて、多くのファンに支えられていることを改めて実感した。「ばす」が初代ネコ駅長になったのは、和歌山電鉄のネコ駅長「たま」の成功がきっかけ。たまが映画やラッピング車両になったのは知っていたが、私たちには無理だとずっと思っていた。それを実現できたのは、ファンの皆さんのおかげだ。(聞き手 高崎慎也)