いわきFC優勝、J2昇格 福島県勢初、J3参入1年目で快挙

 
優勝とJ2昇格をサポーターと共に喜ぶいわきFCイレブン=6日、広野町・Jヴィレッジスタジアム(石井裕貴撮影)

 サッカーJ3のいわきFCは6日、ホームのJヴィレッジスタジアム(広野町)で行われたリーグ第32節で、鹿児島ユナイテッドFCを3―0で下した。2位藤枝MYFC、3位松本山雅FCがともに敗れたため、2試合を残し、J参入初年度でのJ3優勝と来季のJ2昇格が決まった。

 試合は前半15分、FW有田稜がクロスバーのはね返りを決めて先制。後半17分にはMF山口大輝が頭で追加点を奪い、同22分にはMF嵯峨理久がだめ押しの3点目を決めた。

 ホーム戦最多となる4419人が来場し、勝利を後押しした。主将のMF山下優人は「積み上げてきたものが形になって素直にうれしい。全員で取り組んできた成果が出た」、就任1年目の村主(すぐり)博正監督は「選手やスタッフ、サポーター、スポンサーなど何一つ欠けてもこの結果にはならなかった。皆さんに感謝しかない」と声を震わせた。

 いわきは2016(平成28)年に本格始動し、県2部リーグから毎年のようにカテゴリーを上げてきた。昨季はJFLで優勝、今季からJ3に参入した。10月にはJ2昇格に必要なライセンスの交付を受け、本格始動から7年目での快挙となった。

 始動から7年、強化実る

 いわきサポーターで真っ赤に染まったスタジアムに歓喜の声がこだました。本格始動からわずか7年、戦いのステージを次々と駆け上がってきたクラブが、新たな栄冠とJ参入初年度でのJ2昇格という快挙を成し遂げた。

 監督交代がありながら昨季JFLを制した実力と勢いは、J3でも変わらなかった。アウェーでの開幕戦は鹿児島ユナイテッドFCと引き分け。「Jでも十分戦える」。敵地で持てる力をぶつけ合った一戦が、不安を吹き飛ばしてくれたとFW有田稜は振り返る。

 チームは試合を重ねるごとに成熟する。5月の福島ユナイテッドFCとの「福島ダービー」を制して初めて首位に立つと、7月の第19節からは1度も首位を譲ることはなかった。

 迎えた今節、相手は開幕戦と同じ鹿児島。いわきは、前半から運動量と攻めの姿勢で圧倒する。「開幕戦とは別のチームと言えるほど強くなった」とMF山口大輝。Jの舞台でさらに磨き上げられた躍動感あふれるサッカーがこの日も勝利を引き寄せた。

 昇格初年度でのJ3優勝は、2015年シーズンのレノファ山口(現J2)以来。筋力強化などに特化した先進的トレーニングに加え、着実に昇格を重ねる中で全国的に注目されるチームになった。「J2(がどんなところか)は想像できない。それでも自分たちのサッカーがどこまで通用するか楽しみ」と有田は期待する。来季は県内初のJ2クラブとして、再び旋風を巻き起こす。(小磯佑輔)

 チェアマン「クラブと地域」関係称賛

 試合後に表彰式が行われ、Jリーグの野々村芳和チェアマンらがシャーレ(優勝皿)や優勝トロフィーをクラブに手渡した。

 野々村氏は福島民友新聞社の取材に「いわきのサッカーは特徴的だ。自分たちの強みを生かす非常に面白いトライを続け、それが活躍につながっている」と躍進を評し「優勝や昇格はクラブにとって何年かに1回できるかどうかの大きな出来事。いわきは下から昇格を続け、次のステップに向かう。この順調さはクラブのビジョンや地域との関係がうまく循環しているからだ」とたたえた。