泣き笑い...4こま漫画・ももちゃん連載10年 おだれいこさんに聞く

 
ヒロインももちゃんと犬のマメ、猫のオハギが描かれた色紙を手にする、おだれいこさん=埼玉県狭山市

 個性派キャラ、スパイスに

 福島民友新聞の社会面を飾る4こま漫画「ももちゃん」が、1日で連載10周年を迎えた。県内に住む小学4年生、信夫ももちゃんとその家族や近所の人々、不思議な隣人たちが、福島の方言で会話し泣き笑いする毎日の物語。その10年間について、作者である福島市出身の漫画家おだれいこさん(73)に、埼玉県狭山市の仕事場で聞いた。(鈴木博幸)

 力まず毎日

 ―「ももちゃん」は2014年4月1日付本紙に第1回が掲載され、休むことなく10周年を迎えました。おめでとうございます。
 「ありがとうございます。読者の皆さんや支えてくれた皆さんのおかげです」

 ―この10年、いかがでしたか。
 「初めは正直、毎日書き続けられるのかなと思いました。落ちをなんとかしようと考えて、すごく時間がかかったり。当時の編集局長に『私、死ぬ思いで描いてます』とか言いました。でも、何とか頑張っていると、ももちゃんたち家族が、私のそばにくっついてきてくれるようになった気がします。不思議なんだけれど、ももちゃんの方から『ちょっと、これならどう?』みたいに(漫画の展開を)教えてくれたり」

 ―キャラクターが動き始めた。
 「そう。初めは『描かなきゃ』って気負って紙面をにらんでいたけれど、今は『さあ、行きましょうか』という感じでスーっと作品に入っていく感じですね」

 オール福島

 ―「ももちゃん」は福島県出身の作家が、福島県の地方紙で、福島県民のために描く、オール福島のオリジナル作品です。存在自体が大変珍しい。
 「だから初めは『セリフは絶対、福島の方言で書かなくちゃだめ』とかなり鼻息が荒かった。福島の姉たちに、方言だとどう言うのかって聞いて、こんなしゃべり方あったななんて思ってね。方言の本も福島から(埼玉の仕事場に)送ってもらった。初めの2年ぐらい、すごく頑張ったの。『全国紙にない漫画を描いてみるぞ』なんてね。東日本大震災や原発事故もあったし、みんな元気になってもらいたいとも思ってね」

 ―方言には反響が大きかった。「そんなになまってない」という投書もあった。
 「それがだんだん『方言って難しいんだよね。済みません』ってなって」

 ―マイルドになりましたね。作品全体もいろいろ変化した。
 「ももちゃんワールドとしては、少しずつ広がって、キャラクターがちょこちょこ増えてきた。少しずつ少しずつ世界が広がってきた10年でしたね」

「ももちゃん」第1回

 ―登場するのは、ももちゃんと弟のりんご、両親、祖父母の3世代6人家族(犬と猫も1匹ずつ)が中心ですが、街の占い師など個性派ぞろいですね。
 「新聞の4こま漫画なのでファミリーをつくらなきゃと考えたけれど、家族の個性を出すまでは時間がかかりました。年が違ったり、いろんな登場人物が出てくるのは話を膨らませるためです。少しへんてこなおじさんなんかが出てくるのは、私の原体験が反映されていると思います」

 ―子どもの頃の体験ですか。
 「福島の実家は、私が子どもの頃、すごく人の出入りが多かったの。母がウエルカムの人で、例えば私が5歳の時、家の裏の畑で農家のおじさんが牛を引いて来ては野菜を作っていたんだけれど、昼時になると母が『(弁当は)どうぞ家で食べらんしょ』って声をかけて、お茶や漬物を出してた。そんなふうに、いろんな人が家に上がって、一緒におしゃべりしてた。だから漫画にも、手相占いのおじさんみたいな風変わりな人が出てくるみたいです」

 不思議が大切

 ―カッパやこびとさん、宇宙人もいい味出してます。
 「人生には不思議に感じることが大切、スパイスみたいなもの。何か不思議なものが、そばにいるじゃない?っていう雰囲気が好きなんです」

 ―先生にはこれからも頑張っていただきたいのですが、ももちゃんは、これからどんな人生を歩んでいくんでしょう。
 「えーっ、ももちゃんは小学生のももちゃんです。明るく元気に、夢と希望を抱いて、ちょっと漫画家を目指していきます!」

 おだ・れいこ 1951年福島市生まれ。埼玉県狭山市在住。漫画家。民友マンガ大賞審査委員。福島女子高卒。東京デザイナー学院中退。第28回読売国際漫画大賞佳作、第4回まんがの日記念4コマまんが大賞入選など受賞多数。著作に「のどかさんのいまママ日記」など。