盛り土監視、官民で 6月から規制条例「業者特定、通報が鍵」

 

 県外から大量の土砂が持ち込まれ、危険な盛り土が県内で相次いで確認された問題を受け、県は6月に規制条例を施行、盛り土造成に知事らの許可が必要な仕組みを構築する。これに先立ち3月には、盛り土規制法に基づく規制区域に西郷村と矢祭町の全域を設定した。区域内では、危険が認められれば施工業者への改善命令も可能で、県は9月、規制区域を全県に広げる方針だ。これらの規制で危険な盛り土の造成は防げるのか。専門家は行政だけでなく、地域住民の監視の目も重要だと指摘する。(報道部・高崎慎也)

 県内5カ所確認

 西郷村真船の国道沿い、民家の裏手には高さ10メートルほどの土砂が積み上がる。村内が規制区域に設定されたことに伴い、県は3月中旬から盛り土のボーリング調査を進める。盛り土の危険性を確認でき次第、業者に対して土砂の量を減らすなど必要な工事を行うよう改善命令を出す方針だ。

西郷の盛り土西郷村の民家裏手に造られた盛り土。県は改善命令を出す方針でボーリング調査を行い、危険性を調べている

 県によると、県内では2022年9月以降、西郷村の3カ所、矢祭町の2カ所で県外から持ち込まれたとみられる盛り土が確認された。首都圏の各都県は盛り土規制条例が施行されており、規制がない上に地理的に近い県内に持ち込まれたものとみられている。

 県は土砂の持ち込みを防ごうとしたが「これまでは根拠になる法令がなく、業者へ効果的な指導ができなかった」(産業廃棄物課)という。

 区域化前も対象

 盛り土規制法は昨年5月、静岡県熱海市の土石流災害を受けて施行された。規制法のポイントは【表】の通り。規制区域への盛り土造成には知事らの許可が必要となり、不法な盛り土に対しては工事の停止命令や許可取り消しなどの行政処分、罰金などの罰則規定がある。危険性が確認できた場合には改善命令を出すことが可能で、規制区域設定前に造られた盛り土も対象になる。

 危険な盛り土を造成する動きは白河市でも確認されており、県は9月の県内全域への拡大を前に、6月にも同市を規制区域に追加する。県は区域拡大までの空白期間に対応するため6月に条例を施行、盛り土造成を許可制とすることで予防を図る考えだ。県条例では工事の停止命令、許可取り消しなどの行政処分を行うことも可能となる。

 盛り土は各地で問題になっており、隣接する宮城県は20年4月に規制条例を施行、盛り土の造成に知事の許可が必要な制度とした。同県によると、この4年で行政処分の対象となった事例はなく、担当者は「根拠となる条例ができたことで、業者への指導がしやすくなった」と効果を強調する。

 搬出元まで追跡

 本県でも今後、規制法に基づく業者への指導が可能となり危険な盛り土への抑止力が強化される。ただ、規制が整っても盛り土の造成業者が特定できなければ対応が難しいなどの課題もある。盛り土対策に関する国の検討会で委員を務めた京都大の釜井俊孝名誉教授は規制とともに「盛り土を早期に発見できる体制づくりが必要」と指摘する。京都市では、住民が土砂を搬入する車両を追跡し、搬出元の工事現場を特定した事例があるという。釜井氏はこうした監視の目の重要性を指摘し「官民一体で監視する地域に不法な盛り土をわざわざ造る業者はない。地域住民の積極的な監視、通報が重要だ」としている。