山田洋次監督、映画製作の心得熱弁 葛尾のワークショップ参加

 
「福島映画教室」で講義する山田監督(左)と犬童監督=13日午後、葛尾村

 浜通りを舞台に展開中の国内外の若手映像作家らが参加するワークショップ「福島映画教室」の講義で、「男はつらいよ」シリーズなどで知られる山田洋次監督(92)が13日、葛尾村を訪れ、映画製作の心得として「映画監督にとって大事なことはスタッフを信頼することだ」と熱弁を振るった。

 ワークショップ受講者と県民ら約50人が参加した。山田監督の作品「たそがれ清兵衛」を上映後、「引っ越し大名!」などで知られる犬童一心監督(63)と共に講義に臨んだ。山田監督は「福島に関わり続けたい」と復興へと歩む本県に思いを寄せた。

 山田映画の原点「思いやり」

 葛尾村で講義した山田監督は、自身の作品の原点に触れた。一番多いコメディー映画については「人間を勇気づけるには笑いが一番。戦後の本当につらい時も思わず噴き出す出来事があり、立ち直ることができた。人を笑わせるのは難しく、思いやりがないとできない」と語った。山田監督は国内外の若手映像作家らが参加するワークショップ「福島映画教室」の一環で講義した。

 ワークショップは映画関係者らでつくる実行委員会の主催。世界で高い評価を受けているハンガリーの映画監督タル・ベーラ氏(68)が講師を務める。タル監督に選ばれた若手映像作家ら7人が、葛尾村を拠点に滞在して短編の映像を制作している。

 山田監督は講義前にタル監督と懇談したといい「伝説の人で、謎めいており、幻のようだ。会うだけでも深い意味がある。映画人同士、分かり合うことができた。福島に来て良かった」と振り返った。受講者に向けて「タル・ベーラの内側に入り込み、学び取ってほしい」とエールを送った。

 ワークショップを受講している浪江町出身の映像作家大浦美蘭(みらん)さん(29)は「山田監督とタル監督が同じことを話した部分があり、巨匠は通じるのだと思った」と語った。一般参加の葛尾村の遠藤英徳さん(82)は「山田監督から直接深い考えを聞ける良い機会になった」と感無量の様子だった。18日に葛尾村で成果報告会と上映交流会を開く。