ブンケンさんと「希望のカケラ」拾う旅 福島民友の新入社員参加

 
「希望のカケラ」を集めた民友法被姿の(左から)北尾、曲山両記者。右はブンケンさん

 福島中央テレビ(中テレ)の番組「ゴジてれChu!」のコーナー「ブンケン歩いてゴミ拾いの旅」に福島民友新聞社の新入社員の編成部記者2人が参加し、「ブンケンさん」こと郡山市出身の俳優鈴木文健さん(33)と共に「希望のカケラ」を集めた。活動場所はブンケンさんが高校時代を過ごし「第二の故郷」と語る富岡町で、住民らと協力しながら汗を流した。

 行程は富岡町の国道6号沿いにある太田公園を出発し、ブンケンさんの母校で東京電力福島第1原発事故の影響により現在は休校中の富岡高、町役場を経由してJR夜ノ森駅までの約7キロの道のりだった。開始前は「全てのごみを拾ってみせる」と意気込んでいたが、交通量の多い同国道を歩き始めて気合はかき消えた。

 路上のごみは少ないが、目の届かない道路脇の斜面は無数のごみがあった。菓子の袋やカップ麺の容器などが散らばり、中には弁当の容器やビールの空き缶などをまとめて捨てたビニール袋が大量にあった。さらには尿入りのペットボトルまで捨ててある。「なぜきちんと処理しないのか」。怒りと疑問が湧いた。

 富岡高では、ブンケンさんが在学時の校長だった青木淑子さん(富岡町3.11を語る会代表)らが出迎え、校舎の前で校歌を合唱していた。町役場を経て夜ノ森駅へと向かう。街中だったり、農地近くだったりしたためか、ごみの量は少なかった。震災から丸13年を迎える中、同町では解体中の建物や更地が目立ち、復興への厳しい現状を実感した。

 ゴールの夜ノ森駅に到着するとすがすがしい気持ちがあふれた。今回拾ったごみは計23袋(約68キロ)で、昨年よりも13袋多かった。道中で拾った尿入りペットボトルは29本あった。2020年1月開始のコーナーは5年目に入った。ブンケンさんはコーナーを通じて「同じ方向を向く人を増やしたい」と思いを語った。私もブンケンさんと同じ気持ちであり続けたい。(曲山哲平)

 人の温かさ原動力に

 ごみ拾いの道中、たくさんの人から声援を受けた。ブンケンさんが富岡高出身ということもあり、町民有志らの助っ人も多く現れた。一緒にごみを拾う中、「頑張って」「気を付けてね」「ありがとう」と温かい言葉をかけてもらい、やる気がみなぎった。

 飲み物やバームクーヘンの差し入れも頂き、人の温かさに触れて疲れが吹き飛んだ。昼食は「町3.11を語る会」の皆さんの手作りカレーをブンケンさんと一緒にごちそうになった。笑い声は尽きず、まるで親戚の集まりといった雰囲気。ブンケンさんが「第二の故郷」と言う理由が分かった。

 人気コーナーとなって、ブンケンさんには県内各地に知人が増えた。「県内各地に顔が浮かぶ人がいて思い出がある。そんな場所はきれいにしたいよね」と活動の原動力を教えてくれた。なんだか聖人のように見えた。

 昼食後、ごみの分別を行って現実に引き戻された。どうしてごみを捨てるのか。どこでも「誰かの故郷」と認識していれば、こんな行為はしないのではないか。美しい福島を願う気持ちばかりが募った。(北尾水音)