米寿...ずっと舞い続ける 日本舞踊師範・相馬の松本洋子さん

 

 数え88歳の米寿を迎えても、日本舞踊への情熱は衰えを知らない。相馬市の松本洋子さん(87)は、日本舞踊小藤流の師範「小藤悠妙(ゆうたえ)」として、舞台や指導に忙しい日々を送る。「踊りがあって本当に良かった。落ち込んでいる時も、曲に合わせて体を動かせば笑顔になれる。感謝の気持ち、思いやりの気持ちで踊り続けたい」と話す。

240410news7010.jpg写真=発表会のプログラムを見つめる松本さん。「感謝の気持ちで踊り続けたい」と話した

 55歳から手習い、みるみる上達

 日本舞踊を始めたのは、55歳になってからだ。「3人の子育てが一段落してから始めたので遅かったのよ」と振り返る。双葉町で松本さんが営んでいた衣料品店の2階を稽古場にしていた小藤流家元小藤悠芸(ゆうき)さんの姿を見て、いつかは自分も踊ってみたいと思い続けていた。憧れていただけに、入会後の上達は早かった。踊りのしぐさや動きを注意されたり、教えられたりするたびに、一人で何度も繰り返し練習した。

 避難生活の支えに

 1999年に念願の師範になり、町内の自宅で教室も開いた。転機となったのは東日本大震災と東京電力福島第1原発事故。松本さんも教室に通っていた生徒もばらばらに避難した。そんなつらい時期の支えになったのも踊りだった。松本さんが相馬市に移り住むと、生徒も押しかけるようにして戻り、教室が再開した。

 年を重ねることで体力が続かなくなることもあるが、経験を積むことで表現力が高まるのが日本舞踊の面白みでもあるという。6月に予定されている発表会では、哀愁をたたえた歌謡曲「昭和枯れすすき」に合わせて舞う。「曲に秘められた心をしっかりと受け止めて表現したい」と意気込みを語った。(丹治隆宏)