【復興の道標・復興バブル後-2】助成金獲得「狭き門」 復興支援の未来模索

「子どもたちの状況は深刻化しているにもかかわらず、将来的には活動規模を縮小せざるを得ないかもしれない」
震災と原発事故後に発足し、18歳までの子どもを対象に無料電話相談を行っている「チャイルドラインふくしま」(福島市)。事務局長の久間(きゅうま)泰弘(45)は悩ましい心情を吐露する。
2014(平成26)年度、県内の子どもからの電話は約2万3000件あり、大都市圏の都府県に次ぐ全国7番目の多さだ。「子どもは大人の状況に敏感だ」。進路や自殺・自傷に関する相談の割合が全国平均より高く、避難などで親の仕事が変わったり、家族が離散したケースなどが影響していると久間はみる。
チャイルドラインの運営費の一部には、企業が復興支援を目的にした寄付金や助成金を充てており、本年度も民間企業などから百数十万円単位の寄付金を得た。「しかし、いつまでも『復興支援』の段階ではないだろう」。来年度以降活動の規模を維持できるかは不透明な状況だ。
震災後、多くの市民活動団体が生まれ、民間などの寄付金、助成金を得て、行政の手が行き届かない分野の支援を担ってきた。
「震災後しばらくは申請さえすれば必ず助成金がもらえた」。NPO支援を担う市民公益活動パートナーズ(福島市)の代表理事古山郁(58)は「バブルの頃」を振り返り、こう続ける。「時は流れ、今は支援対象として社会の関心を集めるのは熊本。本県の団体にとって民間の寄付、助成は『狭き門』となり、相手が十分納得する事業計画を示すなどの努力が必要だ」
「特需」後の現実に向き合うのは、復興支援を目的に設立された企業も同じだ。「復興支援という『魔法の言葉』はもう通用しない」。13年に郡山市でベンチャー企業「プレイノベーション」を設立した菅家元志(28)は言う。
原発事故の影響を受ける子どもたちのため、スマートフォン、タブレット用の幼児向け知育アプリを開発。復興支援の一環としてスタートした会社だったが、時間の経過とともに「復興というより子育てを巡る本質的な課題の解決に取り組んでいる」との実感が強くなってきた。子育てに関するメールマガジンの配信や、保育士の負担軽減のためのシステムづくりなど、仕事の幅を広げている。
菅家は言う。「近視眼的に『復興』にこだわる必要はない。復興支援が当初の目的だったとしても、現状に合わせた目的の再定義を絶えず行うべきだろう」(文中敬称略)
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