進展と道のり...険しさ相半ば 第1原発、建屋周辺では厳重装備

 
地下水が建屋内に流れ込まないように設置されている「凍土遮水壁」の配管の状況を取材する記者(手前から2人目)。後方に見えるのは4号機の原子炉建屋=28日午後、大熊町

 東京電力福島第1原発の入り口付近には、事故後に建設された大型休憩所がある。高層階の窓の外には青空が広がり、遠くには海が見える。しかし、目を落とせば、原子炉建屋をはじめとした建物やタンクが並ぶ。かつて植物が生えていた斜面は、放射線量低減のために吹き付けられた灰色のモルタルで覆われている。無機質な空間で、作業員らが汗を流していた。28日、廃炉の最前線を取材した。

 1~4号機を見渡すことができる海抜約35メートルの高台に立った。建屋からは約100メートル。敷地内は放射線対策により、96%では防護服を着る必要がなくなった。高台を含む一部の場所では装備が不要で、感染症が拡大していなかったら、マスクすら着ける必要もない。

 正面には、水素爆発で上部が吹き飛んだ1号機の骨組みとがれきが見えた。1号機では建屋全体を覆う大型カバーの設置に向けた工事が進められ、隣の2号機では溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しが年内にも始まる。建屋周辺の作業員は、厳重な装備をしている。少ししか離れていない場所にいる軽装の自分とのギャップに、作業の進展と道のりの険しさを感じた。

 4号機南西側では、東電の担当者から、汚染水増加の原因となる地下水の流入を抑える凍土遮水壁について説明を受けた。凍土遮水壁を巡っては、一部で温度が上昇したり、地盤を凍結させるための冷媒が漏れ出たりした問題があった。担当者は「皆さんにご心配をおかけしてしまった」と繰り返した。

 廃炉工程は政府の「中長期ロードマップ」で枠組みが決められ、廃止措置は原発が冷温停止状態になった2011年12月から30~40年後と設定されている。

 東電の担当者は、安全を最優先するため対策が必要になれば工程がずれる可能性もあるとし「(30~40年の期間で)収まるかという議論は出てくると思うが、現場は努力してできるところまでやるという気持ちです」と言葉を続けた。

 第1原発では、平日は約4000人が働いている。作業員同士がすれ違うたびに「お疲れさまです」と声を掛け合う姿が印象的だった。

 原発事故の責任論は、避けて通ることができない。一方、廃炉が終わらずして本県の復興はない。震災11年を迎えようとする中、協力しなければならないことも、正さなければならないこともある。「どうかお願いします」。祈る気持ちで敷地を出た。(石川支局・国井貴宏)