エフレイ、見え始めた研究開発 「創造的復興」双葉郡から世界へ

 

 福島国際研究教育機構(エフレイ)は昨年4月の設立から間もなく1年を迎える。「世界に冠たる創造的復興の中核拠点」を目指し、根幹に据える研究開発の方向性が少しずつ見え始めた。日本の科学技術と産業競争力の強化という使命を果たすため、双葉郡から挑戦を続けていく。

 本施設を持たない当面の間は主に外部委託で研究開発を進める方針。農林水産やロボット、エネルギーなど重点5分野を設定し、初年度は27の研究テーマを公募した。10日現在、12テーマで委託先が決まり、各地で研究開発が始まっている。

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 ドローン災害救助、海藻量産CO2吸収

 例えばロボット分野では多数のドローンなどに「耳」の機能を持たせ、災害現場で迅速な救助活動につなげる研究に着手した。被災者の声や物音と、ドローン自体のモーター音とを聴き分ける精度が求められ、成功すれば多くの人命を救う技術になる可能性がある。

 エネルギー分野では、相馬市の松川浦で養殖されている青ノリ(ヒトエグサ)などの海藻を大量生産し、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収させる研究が始まった。研究の一部は福島大や会津大が受託しており、県内の動きも活発化している。

 一方、エフレイの山崎光悦理事長は1月末、初年度の委託研究開発の進展度が「当初の想定と比べて6割程度」との認識を示した。研究開発の公募に対し、大学や研究機関側の提案内容が十分合致せず、契約成立に至らないテーマもあるもようだ。

 エフレイは1日、自前の研究体制を整えるため、研究代表者(ユニットリーダー)の公募を始めた。各分野で顕著な実績のある大学教授らを迎え入れ、外部委託から段階的に切り替える方針だ。研究代表者の年俸は最高4700万円に上る厚遇で、国内外の優秀な人材を確保する。

240311sinsai13tokusyu7030.jpg相馬市の松川浦で養殖した青ノリを収穫する漁業者。青ノリなどの海藻を大量生産し、二酸化炭素を吸収させる研究も始まっている