「3.11」描き続け祈る 「ももちゃん」連載、漫画家おだれいこさん

 
「自分は漫画で祈りを続けていくしかない」と話すおださん=埼玉県狭山市

 福島民友新聞の社会面で4こま漫画「ももちゃん」を連載する福島市出身の漫画家おだれいこさん(73)=埼玉県狭山市=は毎年、3月11日のために、特別な「ももちゃん」を描く。その作品は、3月11日に個人的な縁をも感じる、おださんにとって、大切な祈りだという。

 2014年4月から連載が始まった「ももちゃん」は、翌15年に初めて「3.11」を迎えた。その日の作品は、海に向かって立つ女性の後ろ姿から始まった。

漫画ももちゃん

 海は穏やかで、波一つない。青い空には、木彫りの仏像に似た形の雲。やがて立ち去ろうとする女性の背中に、別の女性が「何か落としましたよ」と声をかけるが、女性は「いいんです 私の涙ですから」と言う。元気な小学生ももちゃんと家族が登場する、いつもの軽妙でアットホームな雰囲気とは違い、厳粛で、どこか詩的なムードが漂う作品だ。

 以来、おださんは毎年3月11日の紙面で、ももちゃん一家がそろって海に向かい黙とうする姿など、静かに犠牲者の冥福を祈る作品や読者を励ます作品をこの10年間、描き続けている。

 「多くの人たちが亡くなり、今も立ち直れない人たちがいる。人の心は難しいですよね。だから『十何年たったから(震災の話は)もういい』ということは絶対にない。今年も、元日に起きた能登半島地震では、多くの人たちが悲しい目に遭ったでしょ」と、震災への思いを語るおださん。

 同時に「私は、大きな不幸は経験していない。被災地の人たちの悲しみなど、深いところまでは入っていけない。そんなふうにも考えてしまう」と葛藤を口にし「私はずっと漫画を描いている。だから、ああいう(漫画の)形でしか、私は(追悼や震災への考えを伝えることが)できない。祈りというのかな。それを漫画で続けていくしかないと思っているんです」と話す。

 3月11日は、おださん個人にとっても特別な日、自身の誕生日である。