口腔ケアとは(上)

 

 清潔で潤った状態を保つ

 「口腔(こうくう)ケア」という言葉は比較的新しい言葉です。高齢社会が進み、「介護保険」や「介護予防」などの言葉が一般化するとともに、口腔ケアという言葉も盛んに使われるようになってきました。

 特に、高齢者のための介護施設や高齢の患者が増えつつある病院などでは、「肺炎」の発生率が問題となり、その予防や改善の方法を考えなければならなくなってきました。

 肺炎の中でも、特に「誤嚥(ごえん)性肺炎」や「嚥下(えんげ)性肺炎」と呼ばれるものは、患者の口の中が汚れていたり、免疫力や体力が落ちてくると起こりやすくなります。口の中が汚れていると、食事時にむせたときなどに汚れた唾液が少しずつ気管に流れ込み、肺炎が起こりやすくなると考えられています。

 口腔ケアに関する本を開いてみると、まず「口腔ケアとは...」などと、口腔ケアの定義のようなことが、必ずといっていいほど書かれています。その内容があまりに難しく、私たち歯科医師でさえ、「口腔ケアっていったい何だろう」「いったい、何をどうすればいいんだろう」と悩んでしまうことさえあります。しかし、実はそれほど難しいことではありません。

 簡単に言ってしまえば、「口腔ケアとは、口の中をきれいにして、潤った状態に保ち、本来の口の役割をきちんと果たせるようにすること」です。

 さまざまな原因、理由によって、口の中が正常な状態を維持できなくなり、潤いもなくなり汚れてしまいます。また、口から食べることさえままならなくなってしまっている人たちも増えています。当然、そのような人たちは肺炎も起こしやすくなります。このような状態にならないように、少しでも改善するための手助けが「口腔ケア」なのです。

(県歯科医師会)