「銀歯の材料」 安定素材のパラジウム

 

 銀歯の材料である銀合金はもともと金の代替金属でした。銀は金に次いで力を加えた際にのびがよく形を整えるのに都合がよい金属です。化学的に安定していて酸やアルカリに侵されにくいのですが、化学反応で黒変することがあります。

 歯に使う場合は金属単体ではなく合金として使います。銀合金で銀の配合が多いと硫化と呼ばれる反応を起こし口の中で黒く変化してしまいます。そのため、もともとの状態を保持しながら口の中でも安定している物質を探した結果「パラジウム」を配合すると状態が安定し硫化が抑えられ、合金の強度も上がりました。こうして歯科用合金として金銀パラジウム合金が使われることになりました。

 通常、銀歯のかぶせ物や詰め物は金属を加熱して溶かし鋳型に流し込んで作る鋳造を行います。合金の配合は、金は12%以上、パラジウムは鋳造用で20%以上、非鋳造用で25%以上、銀が40%以上と決められています。パラジウムの生産地はロシアがおよそ40%、南アフリカがおよそ37%で2国で約80%に上ります。

 パラジウムは、ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアからの輸入が途絶えるのではとの不安が高まり価格が急騰しました。また、水素ガスを吸蔵する性質を持つため、二酸化炭素を出さない環境に優しい水素電池の材料として注目されています。(県歯科医師会)