【いわきFC・J2に挑む】哲学貫き「魔境」で勝負 資金力に差

サッカーJ3の参入1年目で快進撃を見せ、県内で初めてJ2昇格と優勝を決めたいわきFC。新たなステージに駆け上がるクラブに待ち受ける、J2の壁やスタジアム問題、地域密着などの課題を探る。
「J2は簡単には勝てない。5年、10年先にどういったクラブの在り方が良いのか。真剣に考えるところにようやく到着するのかな」。いわきにJ2ライセンスが交付された10月25日、運営するいわきスポーツクラブの大倉智社長が思いを明かした。クラブはこれまで通り若手主体の強化方針を貫くつもりだが、当面の目標に掲げてきたJ2に到達し、プロクラブとして一つの分岐点に差しかかる。
J2は昇格と降格に挟まれた唯一のリーグ。競争も激しく、J1から降格したクラブも簡単に再昇格できない。一度はまると抜け出せない難しさは「魔境」や「沼」などと表現される。
各クラブの財政規模からレベルの高さの一端がうかがえる。Jリーグが公開している各クラブの決算情報によれば、2021年度の選手や監督、スタッフに支払う「チーム人件費」の平均額はJ3とJ2で3倍以上の開きがある。この年、J2で最高額だった名門・磐田は優勝を遂げている。
当時JFL2年目だったいわきは2億2000万円。大倉社長によると選手の人件費は今季も大きな変化はなく、単純比較でJ2平均とは約3倍、磐田とは約7倍の差がある。大倉社長も「選手人件費ではJ3降格圏」と厳しさを語る。
それでも「一概に資金力のあるチームが勝つとは限らない」と話すのは長年J2を追うフリーライターの土屋雅史さん(43)。年俸に応じて選手の能力は高くなるが、それ以上に成績を左右するのは「監督に明確なサッカー哲学があるかどうか」と分析する。
代表として挙げるのは熊本や秋田だ。昨年J3を優勝した熊本はチームの多くを占める若手選手を、独自のサッカースタイルを持つ大木武監督が率いる。大木体制3年目の今季、積み上げたものが開花し4位と躍進、J1参入プレーオフに臨んでいる。
20年にJ3を制した秋田は縦に速い攻撃スタイルが特徴。リーグ最低クラスの人件費ながら、J2昇格後2シーズンでいずれも中位に食い込んだ。熊本の若手主体の方針や秋田の明確なサッカースタイルを貫く点は、いわきと重なる。
土屋さんは「J3優勝チームは、組織力や連係をそのままJ2に持ってこられるかも躍進の鍵」とも語る。いわきは今季、JFL優勝メンバーを軸に据えて躍進した。その再現ができれば、来季の善戦も夢ではない。
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