【エフレイ設立1年】災害復興モデル提示
設立1周年を迎えた福島国際研究教育機構(エフレイ)が最重点に位置付けるロボットや農林水産、エネルギーなど研究開発5分野のトップには、国内を代表する研究者らが名を連ねた。各分野の研究内容と将来像について、5人に聞く。
原子力災害に関するデータや知見の集積・発信分野長代理 大和田祐二氏
―福島国際研究教育機構(エフレイ)でどのような研究に取り組むか。
「この分野は、東京電力福島第1原発事故で飛散した放射性物質の動きの調査とまちづくりの研究が中心になる。未曽有の複合災害が起きた地でまた新しいまちをつくる取り組みは世界的に見ても例がない。放射線の影響を調べ、十分安全な場所だと証明する」
「環境中の放射性物質の調査は、複数の研究機関で別々に進められてきたのが実情だ。エフレイが情報を集約することで全体の状況を明らかにできる。市民との対話の在り方を研究してきたグループも合流予定で、情報が集まりつつある」
―この研究分野は浜通りなどの原発被災地に特化しているのか。
「大きな目標の一つではあるが、1月の能登半島地震を含め、被災からの復興は世界的課題になっている。大災害が起きると避難やその後の生活、なりわいの再生など、各段階で多くの課題が複合的に生じる。福島の場合、自治体や関係機関などが13年間で膨大なデータを蓄積してきた。こうした情報を整理し、後世に役立つ形にしたい。原発事故に限らず災害対応の指針として、世界に『福島モデル』を提示できると考えている」
―将来的に目指す社会の姿は。
「われわれが目指すのは研究開発を基盤に人の流れを促し、活気ある地域をつくることだ。浜通りに対話の場所を数カ所整備し、住民と価値観を共有しながら一緒にまちをつくりたい。ロボットや農林水産業などエフレイの研究テーマで成果が次々と表れ、産業が地域に根差すことで、人の流れや景色は変わってくる。その可能性は十分ある」
―南相馬出身者として地元の声をどう受け止めているか。
「大きな期待をひしひしと感じる一方、復興は人や地域によってさまざまな段階にある。新しいものを取り入れていくことは復興に重要だが、新たな価値観が以前のものを否定することがあってはならない。エフレイが地域に溶け込み、良いまちをつくっていけるよう精いっぱい取り組みたい」=おわり
主な研究テーマ
・原発事故で飛散した放射性物質に関する調査
・世界の防災・減災指針策定に福島の経験を活用
・大規模災害時の情報提供の在り方を検討
・災害に強いまちづくりの提言・発信