土壌、再生利用進まず 「全国的な理解を進めていくことが重要」

 

 中間貯蔵施設に運び込まれた放射性物質を含む廃棄物は、搬入から30年以内に県外での最終処分が法的に確約されている。ただ環境省は、そのためには土壌などを公共工事などで再利用して、最終処分する廃棄物の量を減らすことが必要だと主張する。再生利用の現状はどうなっているのか。

 環境省は土壌の再生利用について、放射性セシウムが1キロ当たり8000ベクレル以下という基準を定めている。昨年12月末までに中間貯蔵施設に運び込まれた廃棄物の内訳を見ると、土壌が93.5%、草や枝などの可燃物が4.0%、焼却灰が1.6%で、土壌が大半を占めている。このうち、8000ベクレル以下は、土壌全体の75.9%に上ると試算されている。

 土壌の再利用のイメージは【図】の通り。運び込まれる廃棄物の量は約1400万トン、東京ドーム11杯分と見込む。このうち、8000ベクレル以下の土壌について、異物を取り除いた後で分別、品質を調整した上で再生利用する。公共事業の土台などに使い、上に土をかぶせるなどの対策も講じる。ただ、これまでに再生利用されたのは、飯舘村長泥地区の農地造成での約25万トン(昨年11月現在)にとどまる。

 環境省は最終処分の完了に向けた工程を八つのステップに分けているが、現状は「最終処分の可能性を検討」している状況で「最終処分地に係る調査検討、調整」の段階にも至っていない。担当者は「再生利用や福島県外での最終処分について、全国民的な理解を進めていくことが重要」と指摘する。最終処分の期限である2045年3月までには、あと23年しかない。