すそ野広がるNIE...教育現場で新聞活用、工夫凝らして学習効果

 
新聞の感想を発表する児童=小金井小

 新聞を教育に取り入れる「NIE(エヌ・アイ・イー、Newspaper in Education=ニュースペーパー・イン・エデュケーション)」の取り組みが、県内各地の学校などで進められている。子どもの読解力や考える力の向上につながることから、教育現場ではさまざまな工夫が凝らされている。

会津若松・小金井小の取り組み→記事切り抜き、持ち帰り自由に

 「子どもたちが新聞に興味を持ち、廊下に置いてある新聞を自分から開くようになってきた」。会津若松市の小金井小でNIEを担当する教諭の佐藤早苗さんは、日本新聞協会のNIE実践校として積み重ねてきた取り組みの手応えを語る。同校は、校内の目立つ場所に新聞記事を張り出すなど、子どもに新聞へ興味を持たせるような仕掛けに力を入れている。

 NIE実践校として本格的に活動し始めたのは一昨年4月のことだった。朝の活動の時間に新聞を読む日を設けたり、新聞を読んで感想を発表する授業を取り入れたりしたが、当初は新聞を読む習慣がない児童がほとんどだった。佐藤さんは「習慣として定着させるには、子どもたちが新聞に興味を持ち、自ら手に取るようにしなければならない」と考えた。

 そこで始めたのが、廊下への新聞記事の掲示と、図書室や廊下の新聞置き場の近くに切り抜いた記事を入れたかごを置いて持ち帰り自由にする試みだ。毎朝かごに切り抜きを入れても、しばらくはたまっていく一方だったが、1年続けると切り抜きがすぐになくなるようになった。「子どもたちは好奇心旺盛だから、きっかけさえつくれば興味を示してくれる」。佐藤さんは、実感を込めて話す。

 「NIE通信」発行、保護者への理解 学習効果アップ

 ただ、1年目の終わりにNIE活動に関するアンケートを取ったところ、児童や教員の理解が進んだ一方で、保護者の理解度が低いことが分かった。「家庭で新聞を取ってもらうには、保護者の理解と協力が必要ではないか」と考えた佐藤さんは、NIE活動を紹介する保護者だより「NIE通信」の配布を始めた。

 これまでに6号まで発行しているが、子どもと一緒に新聞を読んで感想を話し合う保護者が出てくるなど、成果が上がっているという。「保護者から『NIEは良い活動ですね。子どもが家で新聞を読むようになりました』と声をかけられたのがうれしかった」と笑顔を見せる。

 同校ではNIEの導入後、子どもたちの文章を読む力だけでなく、文章と表やグラフを関連づけて読み解く力も上がり、算数や理科、社会の学習に効果が出ているという。佐藤さんは「さまざまな分野について、信頼できる情報が載っているのが新聞の良いところ。大人になっても、新聞を読む習慣を身に付けたままでいてほしい」と話す。

220105nie02.jpg※子どもたちへ新聞に興味を持たせようと、図書室などに切り抜きを入れたかごを置いている佐藤さん。「最近はすぐに切り抜きが減るようになった」と話す

福島民友・まなぶんプロジェクト 本紙記者が新聞を読むコツ紹介

 福島民友新聞社は教育現場と連携し、各地で「ハローみんゆう教育応援プロジェクトまなぶん」と題したNIE活動を積極的に推進している。本紙記者が学校を訪れ、福島民友の紙面を使い時事問題や新聞の読み方について解説している。

 情報を正しく読み解く力の重要性が指摘される中、新聞に触れることで、読解力や表現力を身に付けてもらおうと企画している。このうち、昨年11月に行われた田島高では、生徒らが主権者教育の一環として新聞の読み方を学んだ。

 生徒らは、本紙を読んで興味を持った記事を探したり、選挙に関するクイズに挑戦したりして、投票に行く意義などに理解を深めた。

 講座は無料で、学校向けのほか社会人、企業、地域の集まりなどからの応募も受け付けている。依頼を受けた団体からの要望によって、内容や時間も柔軟に対応する。

 昨年6月には、いわき市の小名浜公民館の市民講座で、新聞の上手な読み方などを解説した。同7月は、福島市の県警察学校で、初任科短期課程の45人に仕事で役立つ新聞の活用法を伝えた。このほか、読書感想文の書き方のアドバイスなど、多彩なカリキュラムで「人生100年」と呼ばれる時代の生涯教育をサポートしている。

 講座の申し込み、問い合わせは福島民友新聞社販売局「まなぶん事務局」(電話024・523・1472、平日午前10時~午後5時)へ。

220105nie03.jpg※関心のある記事を探すなどして新聞の活用法に理解を深めた生徒ら=2021年11月、田島高

220105nie04.jpg※新聞の上手な読み方を学ぶ参加者=2021年6月、小名浜公民館

「みんゆうデジタルアーカイブ」運用開始、学校や家庭で役立つ情報や知識を探す

 福島民友新聞社は昨年10月から、ウェブ縮刷版サービス「みんゆうデジタルアーカイブ」の運用を開始した。福島民友の紙面イメージと記事が検索できるシステムを学校などの教育現場でも利用できる。

 県内の各学校では「GIGAスクール構想」の一環で児童・生徒にタブレットが貸与されている。「みんゆうデジタルアーカイブ」のID・パスワードを取得すれば、学校や家庭でNIE推進に役立つ情報や知識を探すことができる。記事の内容は、福島の地元密着のニュースから世界の話題まで幅広く対応している。

 問い合わせは、福島民友まなぶん事務局(電話024・523・1463)へ。