「春の新聞週間」新生活今こそ新聞を デジタルと融合...相乗効果

 
「まなぶん」の授業で、編成記者から見出しの付け方を教わる生徒たち=2022年6月、福島市・松陵中

 日本新聞協会は4月6日から1週間を「春の新聞週間」と定めている。デジタル社会の進展が人類に新たな可能性を示す一方、子どもや若者へのさまざまな弊害も指摘される中、新聞とデジタルの融合による相乗効果に注目が高まっている。

 福島民友新聞社はNIE(Newspaper in Education=教育に新聞を)活動を通して、新聞の活用方法や理解を深めてもらう取り組みを進めている。社会人として必要な教養を高めるツールとして新聞を扱うNIB(Newspaper in Business=ビジネスに新聞を)活動も、多様性が求められる現代社会だからこそ新聞社に期待される取り組みだ。
 
NIE 親しむきっかけ提供

 新聞は読解力や論理的思考力が培われ、表現力やコミュニケーション力の向上などに効果があるとされる。「新聞を読む子は学ぶ力が高い」という調査結果もある。

 教育現場に新聞を取り入れるNIEは県内各地の学校で進められている。例えば、朝のホームルームで「NIEタイム」「朝読タイム」などと呼んで活用する学校がある。政府は地方自治体が学校図書館に新聞を配備するよう予算を確保しながら求めている。

 福島民友新聞社は「ハローみんゆう教育応援プロジェクト まなぶん」を各地の学校で行っている。社員を講師として派遣し「新聞とは何か」「新聞の構成や読み方」を紹介したり、記事を書き見出しを付けるなどの体験をしてもらったり。講義と体験を通じて、児童生徒が新聞や文章に理解を深め、日頃から新聞に親しめるよう、きっかけを提供している。

 
SDGs 環境に意識深める教材

 福島民友新聞社は、持続的な開発目標(SDGs)を広める情報発信のために「SDGメディア・コンパクト」に加盟し、新聞を通じて県民と共に地球全体の課題解決を目指している。

 NIE活動でも「新聞で学ぶSDGs」としてスクラップノートと付箋を作り、希望者に配布している。
 そもそも新聞紙は、そのほとんどが再生紙を利用し、読んだ後も回収、再生利用されるリサイクルのモデル的な存在だ。子どもたちが環境への意識を深める教材としてマッチしている。


230406nie702.jpg※写真=「新聞で学ぶSDGs」スクラップノート

子ども紙面 楽しくニュース触れる

230406nie704.jpg 児童生徒が楽しくニュースや学習教材に触れられるよう、福島民友に毎週月曜日に掲載されるのが「みんゆうジュニア情報局」と「みんゆうパワーアップ勉強室」。学校の授業でも、家庭学習でも役立つラインアップをそろえている。

 特に、連載「知りたい!ホントの恐竜」は、世界的に新発見が続く恐竜研究を子ども向けに分かりやすく紹介。地元のことを学ぶのに最適な特集記事なども充実させた。

NIB 短時間で無駄なく知る

 社会人対象のNIB活動では、ニュースを短時間で無駄なく知る方法として新聞の活用を推奨している。政治や経済、国際情勢、スポーツ、事件事故など、今知ってほしいニュースの価値を記事と見出しの大小で訴え、写真、図表で分かりやすくしているのが新聞の最大の特徴。大きな紙面をめくり、自分自身が関心のなかった情報に「巡り合える」のも新聞の良さだ。

みんゆうデジタル アーカイブ 学校や企業幅広く活用

 福島民友の過去の記事や紙面をインターネットで簡単に検索・閲覧できるシステムが「みんゆうデジタルアーカイブ」だ。定額サービスで利用でき、学校や企業などで導入されている。

 パソコンのほか、タブレットやスマートフォンを使えば、幅広いシーンで活用できる。地域の身近な話題や課題を掘り下げた記事は、学習指導要領で求められた「主体的、対話的で深い学び」を得る授業や教材作りにも役立てられている。問い合わせは事務局(電話024・523・1459、平日午前10時~午後5時)へ。

 
東北大加齢医学研究所所長 川島隆太博士-デジタル依存体に悪影響

 福島民友新聞は2月、新聞を活用した教育事業「読む力、考える力」を福島市で開いた。東北大加齢医学研究所所長で脳科学の研究で知られる川島隆太さん(医学博士)が講演し、活字を読むことで脳が活性化されると強調した。

 川島さんは、若年層のスマートフォン利用などデジタル文化への依存は、睡眠や身体能力に悪影響を及ぼすと指摘。学習能力を高めるためには活字を生活に取り入れ、思考する脳を働かせなくてはならないと警鐘を鳴らした。

 教育現場ではGIGAスクール構想によりタブレット端末などの活用が進んでいる。デジタル社会が急激に進展する世界の動きを着実に捉えながら、紙の上で展開される活字文化との組み合わせで、双方の良さを引き出し、高い効果を得る工夫が求められている。


230406nie703.jpg※写真=「文字・活字の有用性とデジタルの危険性」について講演する川島さん=2月、福島市