【5月4日付社説】住宅の耐震化/高齢世帯向けの補助拡大を

 

 全国各地で大きな地震が相次ぐなか、倒壊などの恐れがある木造住宅の耐震強化が急務だ。

 現行の耐震基準は建築基準法改正により1981年に導入され、「震度6強以上でも倒壊しない構造」が求められている。しかし、それ以前の「旧耐震」の住宅は少なくない。総務省の2018年の調査によると、県内の木造住宅の耐震化率は83・1%で、約9万4千戸が基準を満たしていない。

 1月の能登半島地震では、古い住宅の倒壊で多くの人が下敷きになり、壊れた家屋が道路をふさぐなどして救助活動や物資の運搬を阻んだ。住み続けることができないほどに家屋が損壊すると、生活再建がより困難になるのは、これまでの災害でも明らかだ。

 県内では21、22年に震度6強の地震が発生した。これまでの地震で損壊などを免れても、ダメージを受けた住宅はある。建物の強度を把握し、耐震化の要否を判断するために必要な耐震診断が未実施のケースが多い。県や市町村は、診断士の派遣制度などを周知し、耐震診断を促す必要がある。

 耐震改修は、住宅を支える柱同士の間に筋交いと呼ばれる木材を入れたり、柱と土台の接合部を金物で補強したりする。県によると家屋全体を耐震改修する場合、2階建てで延べ床面積が175平方メートルの場合、約250万円の費用が見込まれる。しかし、いつまで住むか分からない、費用が高い―などの理由で見送る人は多い。

 耐震診断や耐震改修を行うのは所有者とはいえ、収入が年金などに限られる高齢者だけの世帯にとって大きな負担だ。耐震費用などを補助する公的な支援制度はあるものの、建築年代が古い建物や大きい住宅ほど費用がかさむことも耐震化の阻害要因となっている。

 高齢化や過疎化が著しい地域ほど、旧耐震の基準で建てられた住宅が多い。地域全体の防災力を高めるためにも、国や自治体は、高齢世帯などの補助制度の拡充を検討してほしい。

 建物全体の改修ではなく、居間や寝室などを部分的に改修することも有効だ。費用が抑えられるため、県や一部の市町村が推奨しており、県は部分改修に特化した補助制度を設けている。

 最近は改修以外にも、室内に木材や鉄骨で箱型の空間を設ける耐震シェルター、就寝中の安全を確保するため、防護フレームをかぶせた防災ベッドなどもある。

 部分改修やより簡易的な手法で家族の命や暮らしを守ることはできる。課題を放置することなく、まずは行動に移すことが大切だ。