認知症と口の健康

 

 症状に応じた対応が必要

 認知症は、さまざまな原因で脳の細胞が壊れてしまったり働きが悪くなることで脳に障害が起こり、正常であった認知機能が低下し、生活する上で支障が出ている状態をいいます。

 原因により「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」などがあり、症状もそれぞれ違います。

 認知症の進行により、日常の生活動作および認知機能の低下が進むとともに、口の中にもその影響はみられるようになります。

 ひとつには、口腔(こうくう)機能の低下が挙げられます。食物を口へ運び、かみ砕き、ひと塊にまとめ、飲み込む―という食物を摂取する一連の動作が困難となります。

 また、アルツハイマー型認知症の後期や脳血管性認知症においては、摂食・嚥下(えんげ)障害が生じる可能性が高いともいわれており、その結果、誤嚥(ごえん)性肺炎(増殖した口の中の細菌を誤嚥することで起こる肺炎)を起こしやすくなり、栄養状態も悪くなる傾向にあります。

 さらに、症状の進行により、明確な訴えや義歯の装着などが難しくなり、歯科治療も困難となります。

 食生活や日常生活の支援とともに、全身状態や障害の程度に合わせた口腔ケアの提供や適切な口腔管理を通して、機能の低下や重度化をできるだけ防ぐための継続的な支援が大事といえます。

 小さな変化を見逃さず、症状に応じた柔軟な対応や早めの歯科治療を行うことで、当事者の生活の質(QOL)の向上につながります。(県歯科医師会)