「歯を溶かす酸蝕症」 「酸」扱う職場健診義務

 

 歯は人体の中で最も硬く、骨よりも硬い組織ですが、酸にはとても弱い性質があります。むし歯はむし歯の原因菌が糖を分解してできた酸によって歯が溶かされることで生じますが、これも歯が酸に弱いことの一例です。また、酸性の食品や飲料を頻繁に摂取することで、歯が酸性の環境にさらされ歯が溶けてしまうことがありますが、これを「酸蝕(さんしょく)症」といいます。

 酸蝕症は硫酸や硝酸、塩酸など強い酸性の物質が空気中にガス、ミスト、蒸気などのかたちで漂うことによっても起こる可能性があります。そこで、工業製品や医薬品、肥料、染料などを製造したりする工程で塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素、亜硫酸といった物質を取り扱う従業員がいる事業所では、半年に1回の「歯科特殊健康診断」が義務付けられています。

 以前は50人以上の従業員がいる事業者にのみ義務化されていたものが、今年10月1日からは従業員の人数にかかわらず、労働基準監督署への報告が義務付けられることになりました。

 現在の労働環境はきちんと法律にも守られており、適正に環境が整備されていれば、酸蝕症を過度に心配する必要はありませんが、歯科特殊健康診断は歯科の立場から、働く人たちの化学物質による健康障害を防止し、健康を確保することを目的に行われています。

 (県歯科医師会)