「湯本温泉好きに」 いわきFC戦、相手サポーターおもてなし

 
多くのアウェーサポーターが詰めかけるいわきFCのホーム戦=7日、広野町・Jヴィレッジスタジアム

 サッカーJ3のいわきFCが今年、Jリーグに参入したことをきっかけに、いわき湯本温泉の関係者が、いわき市を訪れる対戦チームの「アウェーサポーター」の誘客やおもてなしに取り組んでいる。宿泊プランの設定やスポーツを観光振興につなげるための勉強会などの動きが進み、関係者は「試合観戦を機にいわきを楽しんでほしい」と意気込んでいる。

 試合後はいわき湯本温泉のファンになって―。いわき湯本温泉旅館協同組合は今年、いわきFCホーム戦の観戦チケット付きの宿泊プランの提供を始めた。試合観戦と宿泊を割引価格で楽しめるという内容で、約15軒の旅館が取り扱う。いわきFCのアウェー戦会場でチラシを配るなどして周知を図っている。「いわきFCは、観光以外の目的でいわきに来るきっかけをつくってくれた」と話すのは、プランを提供する古滝屋の里見喜生館主。「アウェーサポーターにはおいしいものを食べて温泉を楽しんでもらい、『次は観光でいわきに来たい』と思ってもらえればうれしい」と期待を込める。

 いわきFCのホームスタジアムは今年、広野町のJヴィレッジスタジアムが使用されているが、来年からは温泉街からも近い、いわき市のいわきグリーンフィールドに切り替わる見通しだ。同組合の薄羽裕一理事長は「来年以降はさらに、いわきを訪れる人は増えるだろう。指をくわえて待つわけにはいかない」とし「地元商店と連携した取り組みも進めたい」と見据える。

 いわき市も、来年以降に向けて準備を進める。いわきFCの対戦相手のサポーターを対象にアンケートを実施し、遠征の際に利用するホテルや立ち寄る場所などを聞き取っている。担当者は「アウェーサポーターが何を求めているのかを調べ、来年以降の取り組みにつなげたい」と話す。

 プロサッカークラブと地域の関係について、他クラブの取り組みを学ぶ動きも出ている。いわき湯本温泉観光協会は今月7日、J3松本山雅FCを運営する松本山雅の神田文之社長を招いた勉強会を開いた。

 同FCは発足から50年以上で、今年Jリーグ参入から11シーズン目を戦う「先輩」クラブ。神田社長は「スポーツと観光」をテーマに講演し「スポーツが地域にできることは交流人口を増やすこと」と強調。「リーグのカテゴリーが上がれば、その地域に来る人は自然と増える。松本山雅がJ1に上がった頃は、夜に街の色が変わるくらい、相手チームのユニホームを着た人が歩いていた。そこに地元がどう発展的に関われるか、考えるきっかけになれば良い」と語りかけた。熱心に聞き入った同協会の箱崎洋一会長は「多くの人を巻き込んでいわきの観光につなげていきたい」と意気込みを語った。