【富岡】「知恵絞らないと一過性」 夜ノ森駅再開の『効果持続』

 
利用再開に向け新設工事が進むJR夜ノ森駅=富岡町

 「桜の時期はともかく、その後に駅を利用する人はいるのだろうか」。10日に帰還困難区域のうちJR夜ノ森駅周辺の町道など約1.1キロの避難指示が先行解除されるが、同町の自営業鈴木静雄さん(66)は町の活性化につながるかどうかを疑問視する。

 鈴木さんは、町中心部の中央商店街で金物店「鈴屋金物」を営む。帰還困難区域を除く避難指示が解除される前の2014(平成26)年に特例として営業の再開が認められ、町の移り変わりを見つめ続けてきた。

 中央商店街は震災前、精肉店や鮮魚店、雑貨屋など約60店舗が軒を連ね、町外からも利用があった。しかし、原発事故の影響で建物の劣化や店主の帰還が進まず大半が取り壊された。観光客も訪れた温泉施設の休業も続いている。鈴木さんは「人を呼び込む資源がなくなってしまった。知恵を絞って魅力を高めないと、夜ノ森駅再開の盛り上がりも一過性で終わってしまう」と心配する。

 町はJR常磐線の再開を受け、夜ノ森駅周辺に健康増進施設や買い物環境などの整備に着手し、帰還困難区域の一部地区の再生に向けた準備を進める。富岡駅前には2023年度の開設を目指し複合施設やイベントスペースなどを設ける方針で、町は「町の新たな魅力づくりを進める」としている。