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子どもの「居場所」設置に地域差 いわきや相双伸びず

 

 子どもたちが地域と交流できる「子ども食堂」など家庭以外の居場所づくりを巡り、県内で地域差が表れ始めている。県の調査によると、福島市や郡山市で増加する一方、いわき市や相双地域では設置が進んでいない状況だ。県は本年度から拡充した支援金の周知を図るなどし、全県的な増加につなげたい考え。

 食事や学習支援などを提供する子どもの居場所は、地域の高齢者らと集まり交流することで、子どもの健全な育成につながることが期待されている。県によると、学校や家庭で居場所がない子どもは自己肯定感が低い傾向にあるとされ、県は「居場所をつくることで自己肯定感や多幸感を保つことができる」(こども・青少年政策課)と居場所づくりの必要性を挙げる。

 県の調査(7月1日現在)では、県内に82件の子どもの居場所が確認された。このうち福島市が24件と最多で、郡山市17件、会津若松市8件と続く。県によると、2016(平成28)年は11件、18年は25件、昨年は62件と、年々増加傾向にある。福島市や郡山市では、子ども食堂などを運営する民間団体と行政がネットワークを構築し、定期的な情報交換などを行っている。県によると、福島市の子どもの居場所数は昨年度の調査時からほぼ倍増した。県は「ネットワークの役割は大きい」と分析する。

 一方、本年度調査で、いわき市は3件、相双地域は2件にとどまった。県によると、結果に反映されていない個人運営の子ども食堂もあるが、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の影響が甚大だった浜通り地域では、これまで復興を最優先してきた背景もあり、子ども食堂の設置が進んでいないと推測している。

 さらに、町村部での開設も7件にとどまる。担い手やノウハウの不足などから、普及が進んでいないという。県内の子どもの居場所を運営する団体で構成するふくしまこども食堂ネットワークは普及に向け、オンラインでの研修会などに取り組んでいる。江川和弥代表は「新型コロナウイルスの収束後、普及に向け市町村や各地の社会福祉協議会と連携し、普及拡大に取り組みたい」と話す。

 県は本年度から、子ども食堂を新たに開設する人たちを対象にした補助金について、子育て支援充実を図る別の補助金と統合し、上限を30万円から80万円に引き上げた。民間団体への支援を継続することで子どもの居場所を増やしたい考えで、担当者は「コロナの影響で雇用や収入が不安定となり、子ども食堂の役割は今後さらに大きくなるだろう」と話す。県は子どもの居場所の調査結果をホームページに掲載している。