【 放射線教育(4) 】 結婚や出産"残る不安"

 

 「将来、他の県の人と結婚したり、子どもをつくったりしたときに、もしも放射能のことを言われたら」

 相馬高放送局の女子生徒たちが、東京電力福島第1原発事故後の高校生の内面を描いた演劇「今 伝えたいこと(仮)」のせりふの一つ。

 事故から4年が過ぎ、作品を制作した先輩は卒業した。せりふのようなことを考える機会はめっきり減ったと、局長の小泉結佳(17)は思う。

 折り合いつけ生活

 放送局の活動を通じて、放射線に関しては勉強した。県民の被ばく線量は少ないとして、健康に影響はないと語る識者。被ばく線量をめぐる政府の対応を批判し、危険性を訴える研究者。どちらが正しいのか、結佳には判断がつかない。

 ただ、「生まれ育った相馬に住み続けたい」という思いがあるから、無用な被ばくは極力避けて、折り合いをつけて生活している。

 結婚や出産も、意識することが少ないだけで、不安が消えたわけではない。相手やその親は受け止めてくれるだろうか。親には「差別するような男なら結婚するな」と言われた。

 副局長の古山茉実(17)はインターネットの短文投稿サイト「ツイッター」で他県の人と交流する際、出身を本県ではなく東北と伝える。「関西を旅行した友達が『福島から来た』と現地の人に伝えたら嫌な思いをしたと聞いた」

 進まない情報周知

 妊娠や出産をめぐっては、昨年度の県民健康調査で、新生児の先天奇形・異常の発生率や早産の割合が一般的な数値とほぼ変わりなかったことが明らかになっている。一方、そうした客観的な情報の周知が進んでいないという指摘もある。

 福島市の産婦人科医市川文隆(59)は、出産をめぐり放射線への不安を訴える人は、震災直後と比べて減ったと感じている。しかし、「それは関心が薄れているから--という見方もできる。県内、県外どちらに対しても、正しい情報を正しく伝える必要がある」と語る。

 もしも放射能のことを言われたら--。結佳は正直なところ、今はまだ自身がどう思うか想像できない。ただ、こうは思う。「いろいろな考え方の人がいるのは仕方がない。でも、本気で結婚したい相手だったら、データで説得するかな」(文中敬称略)