モデルの山田耕筰、両親は福島藩士の家系 志村けんさん演じる

 
福島藩領の飛び地(現愛知県)に建立された「福島領の碑」。現在は同県刈谷市の浄福寺にある

 「エール」で志村けんさんが演じた小山田耕三は、作曲家の山田耕筰(1886~1965年)がモデルだ。主人公のモデルとなった作曲家古関裕而は山田を師と仰ぎ、山田から日本コロムビア専属作曲家の推薦を受けて作曲家の道が開けている。実は山田の両親は福島藩士の家系で、山田自身も幼少期に現在の福島市大笹生地区で過ごしていた。

 山田は日本で本格的な西洋音楽の導入に尽力した人物。古関は学生時代から山田に傾倒し、山田の著書で作曲を勉強した。川俣銀行時代は自身の曲を添えて手紙を送り、激励の返信を受けている。自身の曲が褒められると「うれしくて涙がこぼれた」と語っている。

 山田の父は福島藩の飛び地の三河(現愛知県)在住の藩医・山田家の出身。母は馬術指南役(または大番所小頭)の高橋家の娘だった。戊辰戦争で福島藩は敗れ、福島の領地を没収されて三河に転封された。高橋家はそれに伴い福島から安城市に移住し、ここで山田の両親が出会って結婚した。廃藩置県後、高橋家は再び福島へと戻った。

 山田は1930(昭和5)年10月、福島市での演奏会後に「母親が大笹生生まれで、私もそこにいた時がある。まんじゅう柿(特産の柿)を食べた思い出もある」(福島県史・文化)と語ったという。これは4歳ごろに母親の里帰りに同行した記憶とみられる。

 郷土史に詳しい福島市史編さん室の守谷早苗さん(68)は「(山田は)福島藩の話などを幼少期から聞かされ、福島を古里と感じていたのでは。そのため同郷の古関の手紙に返信し、専属作曲家に推薦したりと応援した」と指摘した。ちなみに大笹生にあった母方の高橋家は判明していない。