【5月1日付編集日記】秘密

 

 秘密ほど重荷になるものはなく、それをもちこたえるのは難しい―。17世紀のフランスの詩人、ラ・フォンテーヌの「寓話(ぐうわ)」にこんな表現から始まる話がある。妻が秘密を守れるかどうかを試すため、ある夜、夫が「私は卵を一つ産んだ」と打ち明ける

 ▼とにかく黙っているよう口止めすると、妻は神に誓ってと約束する。ところが、朝になると寝床を飛び出し隣の家に秘密を打ち明ける。話は広がっていく。口から口へ伝わるうちに卵の数は増え続け、日が暮れる頃には100個以上になってしまった

 ▼ここだけの話だからとか、誰にも言わないように―など当事者間で約束したはずが、いつのまにか話は広まっている。人間の弱さや愚かさは、時代を経ても変わらない

 ▼石川町が発注した公共工事の入札を巡り、塩田金次郎町長がきのう、官製談合防止法違反などの容疑で逮捕された。業者に予定価格を漏らし工事を落札させた疑いがあり、今後の捜査が待たれる

 ▼秘密が漏れるはずはないとでも思っていたのだろうか。「悪事千里を行く」のことわざもある。1票を投じた有権者、全ての町民に対する背信行為を表沙汰にならないよう処理し、なかったことにしたとすれば許されない。