【5月8日付編集日記】ひのき舞台

 

 「すごいプレッシャーがあったが、皆さんの力が僕のパワーになった」。ボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王座の防衛戦をTKOで飾った井上尚弥選手は試合後、ファンにこう感謝した。その表情は、いつになく高揚し輝いていたように映った

 ▼試合会場となった東京ドームでのボクシング世界戦は34年ぶり。勝つか負けるかではなく、どう勝つかにファンの関心が集まりがちな無双の王者の重圧は、想像すらつかない。ただ、大舞台での声援がどれほど背中を押してくれたかは、ストレートに伝わってきた

 ▼アマチュア選手のひのき舞台を今後どうするか、議論が本格化する。国民スポーツ大会(旧国民体育大会)の在り方について全国知事会長が「廃止も一つの考え方」と一石を投じたことで、さまざまな意見が飛び交っている

 ▼大会は原則、都道府県持ち回りで開かれ、2035年から3巡目に入る。スポーツ振興に貢献してきたものの、開催自治体の財政負担が大きな課題だ。競技の実施時期を分散させ、広域で開催する構想もある

 ▼幅広い年齢層の選手が、大会を目標に練習を重ねている。熱い声援を背に、ひときわ輝ける舞台がなくなってしまうのは想像したくない。