「円谷と共に」君原健二さん聖火リレー シャツに亡き盟友の写真
各地を巡り、幕を閉じた県内の聖火リレー。最終日の27日は、陸上で五輪出場経験のある「オリンピアン」や県内出身の元トップアスリートたちがトーチを手に笑顔でコースを走り抜けた。沿道で見守った県民は、五輪本番への期待を高めた。
前回東京五輪銅メダリスト円谷幸吉生誕の地・須賀川市を、57年ぶりに聖火が駆け抜けた。「幸吉さんと希望の道をつなごうと、この日を待っていた」。最終走者を務めた円谷の好敵手でメキシコ五輪マラソン銀メダリスト君原健二さん(80)=北九州市=は万感の思いを語った。
この日の朝、須賀川市にある円谷の墓前で「一緒に務めましょう」と誓った。前回東京五輪で力走する円谷の写真をシャツに入れ、シューズは57年前に自身が履いた復刻版を用意。亡き盟友と共に大役を果たす覚悟で臨んだ。
毎年のように円谷の名を冠した市のマラソン大会に参加してきた君原さんにとって、須賀川は「第二の古里」という。トーチを思わせる赤い花「サルビア」が彩られたコースを走り、市民に拍手で迎えられながらゴール。リレー後のフォトセッションで盟友の写真を誇らしげに掲げた。
「ありがとうの一言です」。君原さんと報道陣の撮影に応じた円谷の兄喜久造さん(89)は、円谷の形見のネクタイを締め、君原さんへの感謝を口にした。
「大成功。言うことなし」。「サルビアの道」を復活させた「円谷幸吉・レガシーサルビアの会」の安藤喜勝会長(71)は声を弾ませた。君原さんが沿道に手を振りながら「道」を走る姿を「見事な光景だった」と振り返る。昨年12月に同市出身の相沢晃選手(学法石川高卒、旭化成)が東京五輪の陸上男子1万メートル代表に内定した。1年の延期により「道」は相沢選手へのエールにもなった。
リレーでは地元スポーツ少年団「円谷ランナーズ」の子どもたちが君原さんについて走った。「貴重な経験になったはず」。そう語るのは同スポ少代表で、中学時代に相沢選手を指導した水野武さん(56)。"第二の円谷"輩出を目指し選手育成に努めている。「円谷の存在が市の陸上関係者の根幹にある。相沢君の活躍を願う」と目を細めた。同スポ少の吉田翔真さん(15)は「君原さんの背中はとても大きかった」と感無量の様子。4月からは学法石川高で陸上を続けるつもりだ。
「素晴らしい選手が出た」。相沢選手に君原さんも期待を込める。好敵手、市民らが大切に紡いできた円谷の遺志は新たな英雄、そして次世代へと受け継がれようとしている。
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