【みんゆう県民大賞 誉れ高く〈1〉】 歌で「故郷」にエール

 
JR郡山駅前に立っている扉のモニュメント。夢に向かって挑戦する若者たちへのエールが込められている

■芸術文化賞 GReeeeN

 第31回みんゆう県民大賞に選ばれた芸術文化賞の音楽グループGReeeeN(グリーン)、スポーツ賞のバドミントン混合ダブルスの東野有紗さん(24)と渡辺勇大さん(23)、ふるさと創生賞の作家柳美里さん(52)、福島医大教授坪倉正治さん(39)。復興へ歩む県民に勇気を与えたそれぞれの活動を4回にわたって紹介する。

心の復興の支えに

 JR郡山駅のプラットホーム。電車が出発する間際、聞き慣れたメロディーが耳に届く。4人組ボーカルグループGReeeeNのヒット曲「キセキ」と「扉」だ。全国から訪れる人に郡山市の魅力を伝えようと、2015(平成27)年から流されている。

 同駅の西口広場には、扉の形をした緑色のモニュメントが立つ。近くにはGReeeeNのメンバーの手形と足形、メッセージが刻まれている。故郷から扉を開いて夢へ飛び立つ人を応援し、また戻ってくる時のためにいつも扉を開けておく―との思いが込められているという。

 メンバーも本県を「故郷」と感じている。4人は歯科医師を目指して入学した県内の大学で出会い、音楽活動を始めた。グループ生誕の地への思いは強い。「大きな空、温かい人々、誰かと比べた幸せでなく、ただそこにある笑顔の尊さに気付いた土地。僕らの根幹に今もなっている」と本県への愛着を語る。

 学生時代、メンバーらはよく県内各地に遊びに出掛けたという。福島市飯野町のUFOふれあい館を訪れた時に全員で手をつなぎ、円になってUFOを呼んだのが「思い出深い」と振り返る。

 GReeeeNは07年にメジャーデビュー。メンバーらは大学卒業後も歯科医師として勤めながら、音楽活動を続けた。10年前に東日本大震災が発生した時もメンバーは本県にいた。リーダーHIDEさんは歯科医師として、東京電力福島第1原発の20キロ圏内で発見された遺体の検視作業に当たった。「自分の中で音楽を見失った」と当時の衝撃を語っている。

 一方で「水を届けるように音楽を被災地へ届けたい」との思いから、楽曲を無料配信したり、東北の人々が参加したミュージックビデオを制作したりするなど、音楽を通して「故郷」を応援し続けてきた。

 昨年は福島市出身の作曲家古関裕而夫妻をモデルにしたNHK朝ドラ「エール」の主題歌「星影のエール」をヒットさせて紅白歌合戦にも出場し、本県への注目度を高めた。

 本県は今もなお復興の途上にある。メンバーらは「福島の中でも状況はそれぞれあって、復興のスピードも、それに向かい合う心も違います。答えは一つじゃなくていいし、昨日出した答えと違ってもいい。そうやって揺れながら花が咲く日を待つのも、復興の一つではないでしょうか」と現状を捉える。

 そして、音楽が心の復興を支えてくれると信じる。「音楽は、楽しくなったり、笑ったり、時に泣いたりする。僕らの曲もそんな一助になれれば幸いです」。多くの人を励ます楽曲をこれからも届けていく。

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 GReeeeN 県内の大学で歯科医師を目指していたHIDE、navi、92、SOHの4人で結成。2007年にシングル「道」でメジャーデビュー。メンバー全員が歯科医師免許を持つ。医療との両立のため、顔や本名を伏せて活動している。郡山市フロンティア大使にも任命されている。