避難者の糖尿病、悪化課題

 

 今回の原発事故による放射線被ばく量とその健康影響について、今年3月に国連の委員会(UNSCEAR)から「2020年レポート」として、最新の報告書が発表されました。報告書では、甲状腺がんを含めて、放射線被ばくに伴ったがんの増加の可能性は低いと報告されています。

 そのような放射線被ばくによる影響は限定的である一方、精神的な影響や生活環境が変わることによる健康への影響は甚大でした。

 精神的な影響と並んで、今でも大きな課題の一つは生活習慣病、特に糖尿病の悪化です。糖尿病は血糖値のコントロールがうまくいかなくなる病気です。血糖値が高い状態が続くため、身体の中のさまざまな血管がさびてしまい、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしやすくなります。また直接的な原因は明らかではないものの、糖尿病のある方は糖尿病のない方に比べて、うつ症状や「がん」までもなりやすいことが分かっており、万病の元です。

 糖尿病は特に避難を経験された方でより悪化していることが知られています。原発事故に伴う放射線被ばくは、国連報告書にもあるように低かったものの、このような健康影響は10年以上たった今でも課題となっています。