災害時、屋内退避を重要視

 

 今回の原発事故をきっかけに、原発の周辺で防災対策を考えなければならない範囲が拡大されました。現在の制度では、発電所から半径およそ30キロ以内の市町村で防災対策が策定されることになっています。

 防災対策の範囲だけではなく、災害発生時の避難の方法についても変更がなされました。その大きなものの一つは、「屋内退避」を重要視している点です。

 「屋内退避」とは、原子力災害時に、窓や扉を閉め切って、建物の中にとどまることです。飛んでくるかもしれない放射性物質を吸ってしまうのを防いだり、周りにまき散らされるかもしれない放射性物質からの放射線を遮蔽(しゃへい)したりすることで、大量の放射線を浴びるのを防ぐ方法です。

 原子力災害時に、原発から遠くに離れる(避難する)ことは、放射線を防ぐために最も有効で重要な方法の一つです。しかし、今回の原発事故の教訓から「避難行動には、それによって避けられる放射線影響と比較しても無視できない健康影響を、特に高齢者や傷病者らの要配慮者にもたらす可能性が高い。また、避難渋滞やパニックに伴う事故なども考えると、避難行動には常に危険が伴うことを認識すべきである」と述べられるようになりました。

 大きな事故の場合であっても、遠方への避難よりも屋内退避が優先される場合があることが強調されるようになったのです。