自宅とどまる避難も重要

 

 今回の原発事故をきっかけに、防災対策の範囲だけではなく、災害発生時の避難の方法についても変更がなされました。その大きなものの一つは、「屋内退避」を重要視している点でした。

 通常、「避難」という言葉を聞くと、それはその場所から離れ、遠くに逃げることを連想される方が多いと思います。確かに、地震や火災、津波のような災害の場合、今いる場所が危険なので、そこから遠くに逃げることを避難と呼びます。

 しかし、避難という言葉の意味は、遠くに逃げることだけを指しません。難を避けることが、避難です。災害が起こっても、そこにとどまることが安全であるなら、その場所から動かないことを避難と呼びます。洪水で建物の1階が水没したときに、同じ建物の2階に逃げることを垂直避難と呼びます。

 原子力災害の場合も、屋内退避というのは結局のところ、自分の家にとどまることを指します。遠くに逃げないので、それは避難ではないと思われるかもしれませんが、そうではありません。今回の原発事故の教訓から、大きな事故であっても、特に要配慮者の場合、遠方への避難よりも屋内退避という、自分の家にとどまるという避難が優先される場合があることが強調されるようになりました。避難という言葉の意味を少し広く持っていただきたいと思い、解説をしました。