母と警部「両立」誇り 福島県警の女性警察官誕生から30年

 
県内で女性警察官の割合が増加している。同じ職場で勤務する女性警察官と会話を交わす小林さん(左)

 現行の警察制度で1993年に福島県で誕生した女性警察官1期生が、勤続30年を迎えた。男性の割合が圧倒的に多い職場だが、少しずつとはいえ着実に女性の割合が増えてきている。県警は、2026年4月に女性警察官の割合を12%にする目標を掲げており、結婚や出産に左右されずに長く働ける職場環境づくりを目指して各種支援策に一層力を入れる考えだ。

 「男子校に突然、女子が入学したようなものでした」。1期生の一人で、福島北署桑折分庁舎交通課長代理・地域課長代理の小林忍さん(49)=警部=は採用当時を振り返る。

 県警は1期生の受け入れに当たり、更衣室やトイレなどのハード面を整備する一方、警察学校での指導役として神奈川県警からの出向で女性警察官を迎えた。

 今でこそ、男女タッグによる事件捜査などは普通に目にするようになったが、小林さんの採用当時は県警で誰も経験したことがなかった。女性警察官とタッグを組む男性警察官の人選などに、県警の担当者が苦心していたように映ったという。

 小林さんの振り出しは福島署駅前交番。初の女性警察官の一人として注目されたが、それ以上に警察業務の多忙さに衝撃を受けた。交通取り締まりから犯罪捜査まで業務の幅は広く、先輩の男性警察官に必死に食らい付く日々が続いた。

 23歳で4歳年上の警察官と結婚し、25歳で第1子を出産した。4人の子どもに恵まれ、産休や育休を活用して子育てと仕事を両立してきたが、全てが順調というわけではなかった。子どもの急な発熱など、思いもよらない出来事がたびたび起こり「(仕事は)今年でもう終わりかな」と悩むことも多かったという。

 小林さんを支えたのは同業の夫を含む家族の協力、職場の理解と配慮だった。そして県民のために日夜活躍する同期の存在が、30年間続ける原動力になった。小林さんらが先駆者となり、育休取得の環境が変わった。小林さんの取得当時は自分で職場に顔を出して復帰の準備をしたが、現在は復帰前に法改正や県内の情勢を学ぶ講習を受講できるなど、県警が不安解消に向けた支援を進めている。

 小林さんは女性警察官が増えた現状を「男女の体力差はあるが、警察業務に男性と女性の両方の視点を持つのは良いこと」と歓迎する。県民によりきめ細かく対応できると思うからだ。今春、管理職でもある警部に昇任し「目指そうと思えば支えてくれる組織。後輩たちに育児と仕事を両立してキャリアを築く姿を見せたい」と力を込めた。(影山琢也)

 今春入校27%が女性

女性警察官の割合の推移

 県警によると、現行の警察制度で本県の女性警察官の割合は今年4月時点で11%となった。1993年の1期生は新規10人、交通巡視員からの切り替え9人の計19人が採用された。今年4月に警察学校に入校した採用者104人のうち、女性は27%に当たる28人。

 県警は女性警察官の増員に伴い、警察学校の寮室や一線署のトイレなど女性専用設備を整えてきたが、交番での仮眠室などの整備は道半ば。交番に女性専用の仮眠室がない場合、署で仮眠するなどの対応をしており、県警は環境整備を急ぐ。

 女性警察官は現在、県警各部、一線署に配属されている。性犯罪や配偶者からの暴力事案の捜査と被害者支援は男性警察官と比べて被害者から対応を要望されることが多く、強行犯、知能犯などの捜査全般、交通指導取り締まり、警衛・警護など、分野ごとに能力や特性を生かした活躍が期待されている。県警の担当者は「引き続き女性警察官の採用に力を入れながら、特性を生かした警察運営を目指していく」としている。