福島県...政治、教育のジェンダー・ギャップ深刻 都道府県版指数

 
【レーダーチャートの見方】 都道府県版ジェンダー・ギャップ指数に基づき、政治、行政、教育、経済の4分野の男女平等度を多角形で表している。面積が大きくなるほど平等度が高く、全分野でバランス良く男女平等が進めば正方形に近づく。指数は各分野で1に近いほど平等を示すが、このグラフでは全都道府県で値が0.1~0.6台のため、中心を0、外側を0.7とした。  

 上智大の三浦まり教授らでつくる「地域からジェンダー平等研究会」は8日の国際女性デーに合わせ、各地域の男女平等度を政治、行政、教育、経済の4分野で分析した2024年の「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」を公表した。前回と単純比較はできないが、政治は全都道府県で数値が上昇。女性が躍進した昨年春の統一地方選の影響とみられる。ただ全国的に男女格差はなお大きく、均等には程遠い。

 福島県は政治が0・148で42位、教育が0・543で43位にとどまり、両分野で女性が少ない傾向が続いている。

 政治は前年の35位から順位を下げ、中でも市町村の女性ゼロ議会が前年の18議会から1増の19議会で46位に後退。教育は前年の46位からは上昇したものの、県内学校の副校長・教頭の男女比が全国最下位となるなど、管理職の男女比が軒並み40位以下となっている。

 また、行政は0・271で25位となり、前年の31位から上昇した。一方、経済は0・424の22位で、前年の10位から低下した。

 女性ゼロ議会19町村、全国ワースト2位

 公表された「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」で、本県は政治、教育の分野での数値の低さが目立った。特に市町村の女性ゼロ議会の数の多さや、学校の女性管理職の少なさは以前からの継続した課題だ。市町村の防災会議に女性が少ない傾向も続いており、早期の改善の必要性が改めて浮き彫りとなった。
 
 今回の調査では県内市町村の女性ゼロ議会が19町村で46位(ジェンダーギャップ指数0・678)となり、昨年の18議会44位(同0・695)から後退した。同指数0・6台だったのは昨年は本県など5県だったが、今年は3県が改善したため本県と最下位の青森のみとなり、県内の女性ゼロ議会の低水準が続いている。

240308jyosei7031.jpg「女性議員の質は変わってきている」と話す磐梯町議の古川さん

 「町の人口は女性が多いのに、議会に女性がいない。町政に女性の声を伝える女性議員が必要だと思った」。2018年9月24日付の本紙で、磐梯町初の女性町議の古川綾さんがこう語った。東京から地元にUターンして2015年の町議選で初当選し、3期目の現在は副議長を務めている。

 18年の記事掲載時、県内の女性ゼロ議会は20だった。5年半後の今もその数はほぼ変わっていない。このことについて古川さんは「数に大きな変化はないが、女性議員の質は変わってきている」とみている。政党所属の女性議員だけでなく、「目的を持った無所属の若い女性議員が多くなってきた」と感じるという。「女性議員の活動を見た人たちが、これまで遠かった議会を自分ごととして捉えられるようになってきたのではないか。子育てなどの課題意識を持つ人の選択肢に、議員が入ってきている」と古川さん。

 自身は家業の農業を継ぎ、農園の経営と子育てをしながら議員活動を続けている。「生活に対する課題や疑問を感じている女性は多い。議員は拘束時間が短く、女性の副業に向いている」と話す。

 町民からはラインなどでさまざまな意見が届く。以前は第2子の育児休業中に第1子が保育所を利用できない、いわゆる「育休退所」で困っている町民の話を聞いた。議会で取り上げて改善し、子育て世代から「安心して2人目が産めるようになった」などの反応があった。暮らしやすい町をつくっていく議員の仕事に、やりがいを感じている。

 磐梯町は古川さんの当選後、女性議員がもう1人増えた。町のために議員活動ができる人を増やそうと、古川さんは働きかけを続けている。
 
 一歩踏み出して

 前回の町議選では立候補に関心を示す女性の動きもあった。「だれかが課題意識を持って、女性や若い人に働きかければ変化が起きる」。そう感じている。

 立候補を検討している女性たちに向けては「迷っている人は一刻も早く議員になったほうがいい。4年は長く、その間ずっと不満を抱え我慢することになる。市町村なら1議員の力で変えていける。ぜひ一歩踏み出してみてほしい」と背中を押した。
 
 まず町内会から

 本県の女性ゼロ議会の状況について、上智大の三浦まり教授は「昨年より増えて退行している。ゼロ議会をなくすことが大きな課題」と改めて指摘する。

 改善のために、まず地域の意思決定の場である町内会や区長会などの役職に女性を増やしていく努力の必要性を挙げ、「地域社会の住民自治から男女同権、女性参画を進めなくてはいけない」と強調。「人口減少の今、女性が意思決定に参加できる地域にしなければ地域が成り立たず、消滅する。さまざまな住民組織に女性が入って発言しなければいけない。高齢男性しか発言できないあしき慣行があれば、それは害悪であると認識し、変わる必要がある」と話した。

 このほかに地域ができることとして、さまざまな女性ネットワークをつくっていくことも効果的、としている。

 ■ジェンダー・ギャップ 社会の中の価値観などに基づく性差(ジェンダー)から生まれる格差のこと。ジェンダー・バイアスは性差に対する思い込みのこと。「男は仕事、女は家庭」「女は理系が弱い」「ドメスティックバイオレンスをするのは男」など、根拠はないが家庭や職場での役割分担、政策やスポーツなどあらゆる分野に影響し、経済格差や差別につながる恐れがある。

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 女性が少ない学校管理職、副校長・教頭は最下位

  教育分野では県内学校の管理職の男女比で、小学校長が0・127で45位、中学校長が0・042で46位、高校校長が0・049で43位、小中高の副校長・教頭が0・145で全国最下位。本県の教育現場での女性の管理職の少なさが目立つ。

 管理職は条件を満たせば試験を受けることができるが、目指すかどうかは個人の意思に委ねられる。県教委は、市町村立学校の教頭については自宅から通勤可能な配置に配慮。県立学校についても本年度、子育てや介護など特別な事情がある場合、男女問わず自宅から通える学校への配置に配慮する方針を定めた。

 上智大の三浦まり教授は「教育現場で女性の校長や教員が少ないとステレオタイプが強化されてしまい、無意識のうちに最初から『トップは無理』と望まなかったり、『女性は算数が苦手なのかな』と思って成長を止めてしまう」と指摘。「男女関係なく『なりたい人は校長先生になれるんだ』とか『社長になろう』とかイメージが広がっていくという将来の展望という意味で、学校現場でジェンダー平等が実現されることの影響はとても大きい。ロールモデル効果がある」と意義を強調した。

 防災会議に多様な声を 県、新年度定数増へ

 地震や豪雨など各地で自然災害が相次ぐ中、47都道府県が設置する防災会議で、2023年に女性委員の割合が30%を超えたのは8都県にとどまったことが、内閣府の調査で分かった。本県は20・4%で21位。組織の長が「充て職」として委員になることが多く、男性に偏りがちな一方、全国では大幅に改善した自治体もある。県は新年度、防災対策に多様な視点を組み込むため委員全体の定数を大幅に増やす方針だ。

 「地域からジェンダー平等研究会」が算出した最新版の「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数(GGI)」は、23年4月1日時点の防災会議の女性委員割合(内閣府調査)のデータを使い、行政指標の一つとしている。研究会が指数の算出を始めた21~23年の内閣府データを比べると、女性委員30%超は3県から8都県に増え、10%未満は1県まで減少していた。

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 本県は委員定数54人のうち女性が11人(23年4月1日時点)で、県が掲げる「審議会などの委員の女性割合40%以上」の目標に届いていない。震災後も頻発する自然災害を踏まえ、4月からは定数を22人増やして76人とし、災害支援や福祉の専門家、女性団体などからの選任を働きかけている。県内の市町村の防災会議は委員総数1277人に対し女性94人で、44位だった。