【公衆電話】今も頼りになる存在、利用減っても災害時に活躍

 
1953年から90年ごろにかけて店舗などで使用されていた委託公衆電話「赤電話」(NTT東日本提供)

 公衆電話を最後に利用したのはいつだろう。携帯電話が普及して久しい現代。そんな今だからこそ、今回は公衆電話の思い出や、これからの公衆電話の役割について調査した。

 声聞きときめき

 投稿では学生時代にお世話になったという「大人世代」からの思い出が数多く寄せられた。「電話ボックスの空間で誰にも気兼ねなく気持ちを伝えたあの頃の自分が思い出されます」(会津若松市・春待ち人さん)、「中学3年の夏、思いを寄せていた人が東京へ転校した時のこと。近くのお店の赤電話で10円玉を次々入れながら、電話からの声で彼を近く感じ胸をときめかせていました」(いわき市・平山さん)。

 硬貨を使う赤電話に代わって普及したのが、テレホンカードが使える緑色や灰色の公衆電話だ。「(週刊少年)ジャンプの読者プレゼントで当たった『るろうに剣心』のテレホンカードを未使用で持っています」(仮面オタマーさん)。以前はプレゼントや記念品などの定番だったテレホンカードだが、現在はコンビニや駅売店などで購入できる。

240314kokohore7020.jpgお土産として観光地などでも販売されていたテレホンカード

 震災にまつわるエピソードも。「震災発生1時間後ぐらいに、避難先の近くにあった公衆電話で実家に安否の連絡がすぐできました」(いわき市・くまこさん)。携帯電話がつながりにくくなることが多い災害時に、公衆電話は頼りになる存在だ。

 設置基準が変更

 公衆電話の今とこれからについて、公衆電話を管理しているNTT東日本に聞いた。

 初めに公衆電話の数について。ピークの1984年には全国に約93万台設置されていたが、2023年には約12万台まで減少している。県内にある公衆電話は23年3月時点で2107台という。

 公衆電話は今後も減り続けるのだろうか。同社によると、22年4月に第1種公衆電話(総務省が設置基準を定める電話)の設置基準が変わり、以前は市街地は500メートル、それ以外は1キロ四方に1台とされていたのが、市街地は1キロ、それ以外は2キロ四方に1台という基準になった。この基準に合わせて削減されている。

 平時の利用が減る一方、災害時の重要性が見直されている。そこで覚えておきたい緊急時の使い方を聞いた。110番などの緊急通報をする際は、赤いボタン(緊急通報ボタン)があるアナログ公衆電話は受話器を上げてボタンを押した後、番号を押す。緊急通報ボタンがないデジタル公衆電話は、受話器を上げてそのまま番号を押す。

 災害時は、アナログ公衆電話は受話器を上げ、硬貨かテレホンカードを投入して番号を押すといった普段と同じ使い方だ(硬貨、テレホンカードは通話後に返却される)。デジタル公衆電話の場合は硬貨やテレホンカードは必要ない。

240314kokohore7030.jpg(写真左)「緊急通報ボタン」があるアナログ公衆電話、(写真右)「緊急通報ボタン」がないデジタル公衆電話

 学校など災害時に避難所になる場所への特設公衆電話の設置も進められている。これらの電話は普段は施設内で保管されているが、災害時に設置され、使用できるようになるという。街中の公衆電話が減る一方、災害時用の公衆電話の設置は増えているようだ。

 普段使う機会は減ってしまっても、もしもの時の備えとして、公衆電話はこれからも暮らしに寄り添い続けてくれる。NTT東日本のサイトで設置場所を調べることもできるので、確認しておきたい。(柳沼力樹)