【みんゆう特命係】子どもの遊ぶ声は騒音? 「うるさい」と通報も

 
県内の公園でボール遊びをする親子(写真は記事と関係がありません)

 「子どもたちはどうやって公園で遊べばいいのか。声がうるさいという理由で警察に通報されてしまう」。本紙「それ、調べます みんゆう特命係~ゆう特」取材班に県内の女性から悩みの声が寄せられた。公園は子どもを含めて多くの人が気軽に利用できる場所だが、一般的に「公園遊び」での明確なルールがあるのか分からずに取材を始めた。(報道部・三沢誠)

 「このままでは公園で遊べなくなってしまう」。女性は子どもたちの遊び場がなくなることを懸念していた。「うるさい」「危ない」といった理由で近隣住民に度々警察に通報され、公園で遊ぶ子どもたちが警察官に注意されることが続いているという。

 この女性によると、最近はその公園で遊ぶ子どもの数が減っている。女性は警察に通報されるのではないかと心配で、長男が外遊びに行く際は「公園で遊ぶ時は大きな声を出さないようにね」と一声かけるようになったという。

 「子どもは騒いだり、危ない遊びをしたりすることもあるが、静かに遊ぶことなんてできるのだろうか」。話を終えると、女性は深いため息をついた。

 記者は今春の週末、その公園を訪れた。静かな住宅街の中にあり、ブランコなどの遊具はあるものの、公園で遊ぶ子どもの姿は見られなかった。

 公園を管理する自治体を取材した。担当者は「住民から寄せられた意見や要望を総合的に判断して対応している」と回答。警察への通報が相次いだ今回のケースを受け「近隣の迷惑や危ない遊びをやめることなど、注意事項を書き込んだ看板を設置した」と説明した。

 近隣の学校にも取材すると、担当者は具体的な策はないとし「マナーを守るよう、子どもたちに周知するしかない」と話した。

 「寛容性多少持って」「地域で話し合いを」

 子ども文化や公園事情に詳しい大正大の白土健教授(63)は、公園の遊び方に決められたルールはないとした上で「個人の判断に任されている場合が多い。近隣住民のことも考えてもらうには、教育現場で『公園はみんなの場所』と教えるだけでも効果があるはず」と指摘。一方、近隣住民には「子どもなので静かに遊ぶにも限界がある。健やかに成長するため、多少の寛容性は持ってあげてほしい」と訴えた。

 全国的にも同様の事例が起きている。長野市では近隣住民から「子どもの声がうるさい」と度重なる苦情を受け、公園1カ所が廃止された。

 白土教授によると、行政などに寄せられる公園についての苦情はここ10年で増加傾向にあるという。核家族化で子どもに慣れていない人が増えていることに加え、在宅ワークなど多様な生活スタイルが確立していることも背景にあると推察する。

 「公園などでの子どもの声は騒音か?」という議論は今国会でも取り上げられた。白土教授は「そもそも公園は皆の憩いの場として整備されている。公園の利用方法について地域で話し合う機会があれば、互いの理解が進むのではないか」と指摘した。子どもを含めた地域住民が、公園使用を窮屈と感じない環境づくりが求められている。