【5月3日付編集日記】観光公害

 

 山梨県富士河口湖町が、富士山を見えなくする大きな黒い幕を歩道に設置する作業を始めた。せっかくの景観をなぜ台無しにしてしまうのか。その理由を知り、複雑な気持ちになった

 ▼道路向かいのコンビニの屋根越しに富士山を撮影できると交流サイト(SNS)で話題となり、外国人観光客らに人気の写真スポットだったという。しかし、ごみのポイ捨てや無断駐車、大型バスも走る町道を横切るマナー違反が目立っていた

 ▼警備員を配置し英語の注意書きを掲げるなど対策を取ったが、改善されず、打ち出した苦肉の策といえる。地元の人たちも眺めを楽しむことができなくなるのは気の毒だが、不慮の事故を防ぐためにはやむを得ないのだろう

 ▼県内でも海外からの観光客が目に見えて増えている。有数の観光地となっている下郷町の大内宿に1~3月に訪れた外国人は、観光客全体の7割以上に上った。福島空港発着の定期チャーター便運航に伴い、台湾からどっと押し寄せた

 ▼大内宿観光協会によると、通りに外国語の大きな声が飛び交い騒がしい場面もあったという。言葉は通じなくとも自然な形で相互が快適に過ごせるよう工夫を凝らし、本県観光の魅力を伝えていきたい。