福島、執念のサヨナラ...打で取り返した扇の要 いわき光洋あと一歩

【福島―いわき光洋】サヨナラ打を放ち仲間に迎えられる福島の志村(左)=いわきグリーンスタジアム
◇全国高校野球選手権福島大会・第7日(16日・いわきグリーンスタジアムほか8試合)
福 島 8―7 いわき光洋
7―7で迎えた九回裏2死満塁。スタジアムの熱気が最高潮に達したこの試合のヤマ場で、福島の4番志村颯斗(3年)が打席に入った。「ここで打つのが4番の仕事だ」
なんとしても打ちたい打席だった。捕手を務める志村は直前の九回表、2死から四死球で一、二塁とされ、相手の4番に同点の3点本塁打を浴びて目前の勝利を逃していた。「心にゆとりがあった中で直球を打たれてしまった。攻撃で絶対に取り返すという思いだった」
強い決意でバットを握りしめた。2球目、甘く入ってきた直球をたたくと、打球は遊撃手のグラブをはじいて左前に転がった。スタンドが沸く中、志村は右拳を挙げながら一塁を回り、仲間の元へ駆け寄って抱き合った。
「何度も好機をつぶしてきたので、返すことができて良かった」。初のサヨナラ打で直前の悔しさを帳消しにした。
「飛距離があり、頭を使った野球ができる捕手」と矢部恭平監督が評する頭脳派。得意な理系科目の成績は上位で、チームの扇の要としての信頼は厚い。「配球をしっかりと組み立てて投手を引っ張り、勝ち続けて甲子園に行きたい」。サヨナラ勝ちの喜びもつかの間、夏の頂に向け表情を引き締めた。(副島湧人)