雨水中のトリチウム減少

 

 廃炉作業が進められている原発周囲の敷地内タンクには、放射性の水素である「トリチウム」が保管されています。トリチウムは最も軽い元素である水素の仲間です。トリチウムは原発で発電の過程で作られる人工の放射性物質である一方で、自然界に存在する放射性物質でもありました。

 トリチウムは宇宙から飛んでくる放射線の一種である宇宙線が、大気中の窒素や酸素と反応することで作られるため、トリチウムは雨水にも含まれます。そして、緯度が高くなるほど、つまり北側になればなるほど、雨水に含まれるトリチウムの量は増える傾向にありました。

 この雨水中のトリチウムは、年々少しずつですが低下傾向にあります。大気圏内の核実験が行われていないからです。現在の雨水中のトリチウムの濃度は、核実験の影響が強くあった50~60年前に比べて、数十分の1から数百分の1まで低下しています。

 東京でも、1960年代前半では雨水1リットル当たり200ベクレル程度のトリチウムが含まれていたことがありました。東京より緯度の高いオーストリアの首都ウィーンでは、1リットル当たり700ベクレルを記録していることもありました。

 もちろん放射線の影響はその浴びた量の問題であり、トリチウムが出す放射線は非常にエネルギーが小さいことが知られています。200とか700とか言うと大きく聞こえますが、この数字は健康への影響を危惧するような数字では全くありません。